2018.04.25

活用広がる3DCG。“まるで実写”が求められる理由

3DCGキャラクターの現在、未来

日本政府観光局がバーチャルYouTuberを訪日観光大使に起用するなど、昨今、CGキャラクターの利用シーンは広がりを見せています。

なかでも3DCGを使ったキャラクターは、見た目も“まるで実写”のようで、大きな注目を集めています。では、“まるで実写”だけが持つ強み、実写との違いとは、どこにあるのでしょうか。バーチャル女子高生「Saya」を生み出した3DCGアーティストユニット・TELYUKA(テルユカ)のおふたりにお話を聞きました。

目次

ゲームによって利用が拡大した3DCG

TERUYUKIさん、YUKAさん
3DCGアーティストユニット「TELYUKA」。左・晃之さん、右・友香さん

――2015年10月、おふたりが3DCGキャラクターの女子高生「Saya」をTwitterで発表すると、大きな話題を呼びました。そもそも3DCGという分野は、いつ頃から登場したものなのでしょうか?

「3DCGが身近なものとして使用されてきたのは、1990年代半ばくらいからだったと認識しています。格闘ゲームと呼ばれるジャンルに、CGのキャラクターが登場したことで、一気に認知、利用が拡大した印象です。3DCGの黎明期と呼ばれる時代はそれよりももっと以前のことですが、僕自身は90年代後半から3DCGに関わり始めました」(晃之さん)

「私たちは当時在籍していたCGの制作会社で出会い、その後結婚し、現在のユニットを結成しました。2009年頃から自主制作によるキャラクターづくりを開始。2014年頃になると、投稿型サイトやSNSの普及により、さまざまなアーティストがネット上で作品を発表し始めました。私たちも同様に、自分たちで制作したオリジナルキャラクターをネットに投稿するようになりました」(友香さん)

「Saya」の前にTELYUKAが作成した3DCGキャラクターの一例。(提供:TELYUKA)

――作例を拝見すると、当時作成していたのは、日本人でなく、外国人のキャラクターが多いようですね。何か理由はありますか?

「海外の方は、目鼻立ちがはっきりとしていて、顔が立体的ですから、描画しやすいんです」(友香さん)

「そのなかで日本人のキャラクターにチャレンジしようと生まれたのが『Saya』です。構想から完成まで約1年。2015年に発表したのはコンセプトモデルで、“17歳の女子高生”という設定を大切に、透明感のあるキャラクターを目指しました。以来、細かくアップデートを続けています」(晃之さん)

左から、2015年ver、2016年ver、2017年ver(提供:TELYUKA)

「2015年の時点では、上半身だけの静止画として発表しましたが、最初から『Saya』は動かす前提で作っていました。ですから“アップデート”も、単純な見た目の話ではなく、より滑らかな動きを実現するためのアップデートです」(友香さん)

“まるで実写”のようなCG女子高生「Saya」(2017年ver)。(出典:Miss ID 2018 Audition)

AIと組み合わせ、インタラクティブな動作も可能に

――初めて見た人は、「Saya」を本物の人だと勘違いしそうなほど、その見た目の完成度は高いものです。3DCGキャラクターは現在、“動く”以外にどんなことができるのでしょうか?

「3DCGを動かすというのは、非常に難しい技術なのですが、その点については、モーションキャプチャ(人の動きをデジタル的に記録する技術)の発展により、そのハードルは下がってきています。『Saya』も技術協力を得て、2016年からはモーションキャプチャを導入し、動かしています」(晃之さん)

人間には骨や筋肉、皮膚があるため、キャラクター造形の際にも、その点を意識する必要がある。画像は「Saya」の例。(提供:TELYUKA)

「理想を追求し、それを形にすることは決して容易ではありません。次のステージとして、現在『Saya』は、インタラクティブなアクションが実現できるようになりました」(友香さん)

「先日出展したイベントでは、4Kモニターに実物大の『Saya』を映し出しました。来場者が目の前に立つと、カメラが撮影した来場者の表情をAIがリアルタイムで認識・推定し、感情を決定。その結果を受けて、『Saya』が反応する、というインタラクションを披露しました。認識される表情は、笑顔・悲しみ・怒り・無表情といったものが含まれます。感情は大きく分けて、ポジティブ、ニュートラル、ネガティブの3種類です。たとえば、来場者の表情を見て“怒っている(不機嫌)”と判断されれば、『Saya』はそっぽを向きますし、笑顔で見つめられると、照れるという動作を返します」(晃之さん)

表情認識AIが来場者の感情を推定。その結果に基づき、『Saya』が動作する。(提供:TELYUKA)

――感情の推定から動作までも、リアルタイムに反応するのでしょうか?

「すべてがそうではありません。技術面は外部の企業が担当していますが、来場者の表情はリアルタイムで一定期間認識・推定されており、たしか6~10秒間分析をした結果を受けて、『Saya』が反応するようになっていたはずです。『オウム返しの反応にしたくない』という思いから、“ある一定の期間を分析”としていますが、将来的には、動作の描画においてもリアルタイム性が実現できれば、もう少し複雑な感情の揺らぎを表現できるようになるかもしれません」(友香さん)

「今後、より人間に近づくという意味では、“声を発する”という未来もあるかもしれません。ただ、口の動きをリアルに再現するのは非常に難しいのと、『Saya』が話すようになると、“想像と違う”と感じる人も出てくると感じています。その点はやや懸念材料ではありますが、3DCGキャラクター全体としては、より“リアリティー”を求めて進化を遂げていくと考えています」(晃之さん)

“まるで実写”、最大の強みは安心感

――3DCGキャラクターは現在、プロモーションへの利用も多くあります。“まるで実写”と実写との違いは、どこにあると感じますか?

「人が人に感じる印象と、人がバーチャルキャラクターに感じる印象は大きく違うものです。バーチャルキャラクターは、“まるで実写”のように見えても、やはり作り物ですから、生々しさがなく、誰かを喜ばせることはあっても、傷つけることはありません。誰かと対峙するときに、“この人はどんな人なのだろう?”と警戒することはあっても、バーチャルキャラクターに警戒する人はいませんよね。その安心感はプロモーション活用する上でも、大きな強みになっているのではないでしょうか」(友香さん)

「いうなれば、赤ちゃんに触れるのと同じ感覚です。常にフラットな状態で受け入れられるため、メッセージもユーザーに届きやすいのが特徴です。また、バーチャルキャラクターには特有の“余白”があります。実在するタレントさんには“日常生活”や“イメージ”がありますが、バーチャルキャラクターにはどちらもありません。そのためユーザーには”こんな生活をしているんじゃないか”と、キャラクターの背景を自由に想像して楽しめる“余白”があります。つまり、限りなく無色透明に近い存在ですから、どんな企画、プロモーションとタイアップしても、“マッチしない”ということは基本的にはありません。むしろ、イメージの余白がプラスに作用することの方が多いのではないでしょうか」(晃之さん)


――その特性を生かし、現在バーチャルYouTuberやバーチャルインスタグラマーがSNS上で活躍し始めているのでしょうね。

「そうだと思います。他に、バーチャルキャラクターが“永遠”であることも、プロモーションに利用しやすい理由のひとつだと思います。年齢もキャラ設定も、基本的には永遠に変わりませんから」(友香さん)

「また日本は、アニメや漫画文化が根付いていますから、バーチャルキャラクターに対して抵抗感がないことも、プロモーション利用の追い風になっていると思います。個人的には、3DCGキャラクターの活用というのは、ゆるキャラの進化形だと捉えています。彼らにもバーチャルキャラクターと同じような共通点を見つけることができますし、活動領域も似ているように感じます」(晃之さん)


――最後に。3DCGキャラクターの今後の展開について、ご意見を聞かせてください。

「今後はSNSだけでなく、テレビなどの動画メディアでの露出も増えていくのではないでしょうか。人とバーチャルキャラクターが共演できる技術も確立されていますし、さらに日常的に目にする機会は増えていくと考えています」(友香さん)

「私たちも『Saya』をさらに進化させ、さまざまな形でみなさんを驚かせていきたいと思っています。ぜひ楽しみにしていてください!」(晃之さん)

モーションキャプチャやAIによって、現在も進化を続けている3DCGキャラクターの分野。「安心感」と「フラットにユーザーへメッセージを届けられる」という強みを生かし、今後も利用シーンは、さらに拡大していきそうです。

Written by:
BAE編集部