2018.11.09

スタジオコロリドに聞く!「企業がアニメを求める理由」

実写コンテンツにはない、その優位性とは?

日本が世界に誇るカルチャーのひとつである「アニメ」は、老若男女問わず、幅広い世代に支持されるコンテンツです。毎年発表される邦画のランキングにも、“必ず”と言っていいほど、近年アニメ映画がランクインしていることは、その裏付けとも言えるでしょう。

最近では、企業CMやキャンペーンなど、プロモーション領域でも、アニメの活用が増えています。その利点や理由はどんなところにあるのでしょうか?

多数のアニメCMを手掛け、今夏公開の『ペンギン・ハイウェイ』では、初の長編アニメ映画を制作、その映画本編素材を使用し企業とのコラボレーション動画を展開した、株式会社スタジオコロリド 取締役 宇田英男さんと株式会社ツインエンジンの鈴木啓央さんにお話を聞きました。

目次

アニメ映画と企業のコラボは、双方にメリットがある施策

宇田英男さん、鈴木啓央さん
左から株式会社スタジオコロリド 取締役 宇田英男さん、株式会社ツインエンジン 鈴木啓央さん(両社はグループ会社であり、ツインエンジンが企画会社、スタジオコロリドが制作会社という位置付け)

――先日公開され、大きな注目を浴びたアニメ映画『ペンギン・ハイウェイ』は、ツインエンジングループのアニメ制作会社・スタジオコロリド初の長編作品です。新たなファンを獲得する機会にもなったのではないですか?

鈴木

そうですね。スタジオコロリドはこれまで、アニメCMやテレビアニメなどのコンテンツを多く手掛けてきました。
特にアニメCMでは、「誰が見ても受け入れやすく、瑞々しい表現」を得意とする制作会社であり、その強みを活かし、長編映画にトライしたのが今回の『ペンギン・ハイウェイ』です。

宇田

これまでオリジナルを中心に手掛けてきましたが、今回初めて原作モノに挑戦しました。本作はいわば、弊社が培ってきたノウハウ、スキルの集大成であり、自信を持っておすすめできる作品に仕上ったと思っています。映画をきっかけに、「スタジオコロリド」を知ってくださった方も多く、大変うれしく思っています。

スタジオコロリドが制作した作品の一部/パズル&ドラゴンズ CM『アニメ転校生』篇、マクドナルド CM『未来のワタシ篇』、マルコメCM『料亭の味 たっぷりお徳 母と息子篇』

――『ペンギン・ハイウェイ』は、街に突如現れたペンギンの謎を解く、少年が主人公の青春ファンタジーです。登場人物も愛らしく、企業とも多くコラボレーションしていました。企画段階から、企業との連携を意識していましたか?

鈴木

していなかったわけではありませんが、こんなにも反響を呼ぶとは思っていませんでした。

宇田

スタジオコロリド初の長編映画ということで、これまでお付き合いのあった企業を中心に多くの問い合わせをいただけたことはうれしかったですね。

鈴木

最初のコラボレーションは、求人広告の「アイデム」社と実施した、コラボ動画の制作です。インターネット広告を中心にさまざまな形で露出したところ、多くのアクセスが集まり、企業にとっても映画にとっても、うれしい結果となりました。

宇田

他にも、「Dell(デル)」社と行ったプレゼントキャンペーンでは、Twitterの告知に対して、通常の10倍近いリツイートがあり、その反響を受けてホームページのTOPに、『ペンギン・ハイウェイ』のビジュアルを活用いただいた時期もありました。

幅広い層に“世界観”をアプローチできる「アニメ」

スタジオコロリドが制作した、大塚製薬CM『すすめ、カロリーナ。』(© Otsuka Pharmaceutical Co.,Ltd.)

――2社とも成功したプロモーション事例と言えますね。もちろん作品に魅力があったことも理由だと思いますが、「アニメであること」もそこに影響していたと感じますか?

鈴木

そうですね。アニメはユーザー層が広いですから、子どもから大人まで、幅広くアプローチできたことが、結果にもつながったのではないでしょうか。

宇田

今回、企業とアニメのコラボレーションにより、「アニメの好感度が企業にも伝染する」といった効果があるように感じました。作品としても企業とコラボレーションすることで宣伝になりますから、双方にとってメリットがある取り組みだと思います。

鈴木

他にも、アニメというカルチャー自体がSNSとの相性がよく、アニメの絵を使用するとユーザーの反応を得やすいことも、企業にとってコラボレーションするメリットと言えます。またSNSだけでなく、Web全般でアニメコンテンツはユーザーの反応がよい傾向にありますから、デジタルプロモーションとの相性もいいと考えています。

――最近では、テレビCMでもアニメを使ったものを多く見かけるようになりました。その現状をどのように感じていますか?

鈴木

とても面白い現象だと捉えています。通常テレビアニメだと2年くらい前から、今回の『ペンギン・ハイウェイ』も3年くらい前から制作を開始しています。それくらいアニメ制作というのは時間が掛かるものなんです。アニメの場合、3分ほどの動画でも、制作期間が半年以上かかってしまいます。一方、テレビCMは即時性が求められますから、本来は長期の制作期間を要するアニメとの親和性は高くないはずなんです。それでもアニメCMを目にする機会が増えているのは、ユーザーの多くが「アニメを求めている」から、と言えるでしょう。

宇田

その点、アニメ映画とのコラボの場合、(映画で作成した)素材がすでにありますから、すぐにコラボレーションが可能です。アニメCMコンテンツのニーズと時間軸を考慮すると、映画素材の流用やコラボはさらに拡大、主流になっていく可能性もあるように感じています。

――では、「アニメを使うことの優位性」は、どんなところにあるのでしょうか?

鈴木

やはりいちばん「アニメが優れている点」は、キャラやストーリーを通じて、“世界観”を伝える柔軟な表現力にあると思います。

宇田

アニメに慣れ親しんだ世代が大人になったことで、アニメはいまや、子どもから大人まで楽しめるエンターテインメントになりました。アニメを活用することで、ターゲットを絞り過ぎず、広く訴求できる点は大きな強みだと思います。

鈴木

それを根底から支えているのは、人と動物が会話をするなど、アニメだからこそできるフィクションの面白さであり、強さでしょう。そのためイメージ訴求しやすく、特に企業ブランディングにおいて、アニメコンテンツは効果を発揮する傾向にあります。

宇田

アニメの優位性という点では、海外にアプローチしたい場合、アニメなら言葉の壁を超えたコミュニケーションが可能ですから、実写よりアニメの方が有効だと考えています。弊社では以前に、ファスナーで知られる「YKK」社のWeb CMを制作したのですが、そのアクセスの8割は海外からのものでした。

『YKK×Perfume×COLORIDO short animation「FASTENING DAYS」』
宇田

動画では、さまざまな人種が出てくる構成にすることで、どの国のユーザーが見ても、親しみを感じられることを意識しました。また同様の理由で、場所も限定せず、抽象的な表現にしました。

鈴木

目的が“イメージ訴求”ではなく、「商品を魅力的に見せる」という点においては、やはり実写の方が“リアル(食品ならシズル感、化粧品なら使用感など)”を伝えられますから向いていると言えます。ですから実写とアニメ、「どちらが優れている」ということはなく、一長一短なんです。目的に応じて手段を選ぶことが重要だと思います。

課題は制作期間の短縮、それがクリアできれば活用はさらに進む

――今後もプロモーション領域における「アニメ」活用のニーズは高まると感じますか?

鈴木

はい。ひと昔前までは、「アニメは子供のもの」でした。しかし現在、子どもから大人まで、多くの人がアニメというカルチャーを好意的に受け入れています。そうした現状を考えると、「アニメ」のニーズがなくなることは考えにくいですし、むしろプロモーション領域においては、「表現としてアニメを選択することはトレンドではなく、もはや定着した」とさえ感じています。

宇田

そのなかで弊社は、「制作期間が長く、すぐにコンテンツを準備できない」というアニメ特有の課題を、「制作期間を短縮」することで解決したいと考えています。現状アニメCMのようなショートコンテンツにおいて、アニメキャラクターを利用した企業タイアップのニーズは増加していますが、一方で商品などの発表までのインターバルは短縮傾向にあります。もし「アニメ制作の時短」が実現できれば、企業がさらにアニメを利用しやすい環境が整います。

鈴木

具体的には、長編アニメ映画のように、「CMに流用できるようなコンテンツ素材を事前に用意」したいと考えています。アニメは、キャラクター設定などを決めるだけでも、かなりの時間を要しますから、弊社で扱った事のある既存のキャラクターを活用するなど、あらかじめキャラクターを準備しておけば、カスタマイズも容易にでき、制作期間の短縮にもつながります。

宇田

いままさにその準備を進めている段階なのですが、今後は企業のニーズによって、いくつかのプランが提案できるとベストだと考えています。ひとつはこれまで同様、長期の制作期間を要する「オリジナルキャラクターを使った、ブランディング目的のアニメCM」。もうひとつが短納期にも対応可能な「事前に準備した素材(キャラクター)を利用したアニメCM」です。また同時に、制作のデジタル化を進めることで、作業の効率化を実現し、さらに専用の制作ラインを作ることで、当スタジオ発で、より多くのクリエーターを輩出できたらと考えています。

鈴木

加えて、弊社ではテレビアニメの制作も行っていますから、テレビアニメとのコラボレーションも充実させることができたらと思っています。現在は放送中に「コラボしたい」というご要望をいただいても、制作期間中にアニメの放映が終わってしまうケースが多いんです。その問題を解消できれば、事前にプリセールスし、オンエア中にコラボCMを放映することも可能となり、さらにアニメ活用の幅を広げることができると考えています。

――今後、企業のアニメCMへのニーズがさらに高まれば、業界全体を巻き込んで、アニメコンテンツの在り方が変化していく可能性もありそうですね。

鈴木

そうですね。だとしても「スタジオコロリドらしさ」だけは、決して失ってはいけないと思っています。

宇田

スタジオコロリドは「気持ちを動かす作品を得意」としています。そのために愛らしいキャラクターと、元気な画作り、かつ家族で楽しめるストーリーであることを重視しています。そんなスタジオコロリドらしいアニメ作品を、今後も作り続けていきたいと思っています。

鈴木

今回、長編映画にトライしたことで、より多くの方に「スタジオコロリドらしさ」に触れてもらえたことは大きな喜びでした。今後、オリジナルキャラクターを使った企業CM、ショートアニメのコンテンツ、テレビシリーズのアニメキャラクターを使ったコラボCMなど、新しい可能性を模索しながら、より多くの方に愛される、アニメ企画・制作会社へ成長していけたらと考えています。

アニメに親しんだ世代が大人になったことで、アニメを活用したプロモーションは、幅広いユーザーへのアプローチを可能にしています。その豊かな表現力やストーリーによる訴求力は、世界観を構築するブランディングに向いた手段と言えます。日本国内はもちろん、海外への発信ツールとしても、アニメの活用は今後さらに拡大していきそうです。

Written by:
BAE編集部