2018.02.28

ARアプリは消費者行動を変えるか?

精度98パーセント!ARアプリの現在地と未来

以前は珍しかったAR(拡張現実)も、大ヒットした「ポケモンGO(Pokémon GO)」の影響もあり、現在では一般ユーザーにとって身近なものとなりました。現在ではARはゲームだけでなく、観光やショッピング、教育など、さまざまな分野で活用が広がっています。
 
インテリア業界もそのひとつで、業界全体で、ARを活用したサービスが多く存在しています。その中でも家具アプリ「IKEA Place」は高い精度を誇り、注目を集めています。
同アプリをリリースした、イケア・ジャパン株式会社のDigital Merchandiser・鈴木心さんに、「ARアプリの現在地、今後の可能性」などについて聞きました。

目次

「リアル」×「バーチャル」で、体験を届けるAR

イケア・ジャパン株式会社 Digital Merchandiser・鈴木心さん
ロケーション協力:IKEA Tokyo-Bay

昨年、iOS11向け、AR対応アプリが作れる開発者向けキット「ARKit」がリリース。App Storeには、新OS(iOS11)の公開と同時に、気軽にARが楽しめるARKit対応アプリが続々と公開されました。そのひとつが精度98パーセントを誇る「IKEA Place」です。

ARの強みは「リアル」と「バーチャル」を融合することで、ユーザーに新しい体験を届けられる点にあります。

「IKEA Place」は、ARのその強みを最大限に活かした、部屋の中に実寸大の家具を配置できる家具アプリです。同アプリを利用すれば、サイズの測り間違えによる誤購入の防止や、現在の自宅インテリアとのカラーコーディネートを事前に確認することも可能です。

家具アプリ「IKEA Place」の利用イメージ

アプリを作ったのは、世界各地に出店している世界最大級の家具量販店「イケア」。日本でも9店舗を展開していますが、実はECサイトは昨年まで存在していませんでした。しかし、「これまでイケアがデジタルテクノロジーと無縁だったわけではありません」とイケア・ジャパン株式会社のDigital Merchandiser・鈴木心さんは言います。

「現在イケアはマルチチャネル化に向け、システムの構築、物流の効率化、従業員の育成などを、世界各国のイケアグループ全体で、一斉に取り組んでいます。お客さまにオンライン、オフラインともに快適なお買い物体験をご提供するにあたり、グローバル企業として世界同時に準備を進める必要があり、結果的に日本国内でのオンラインストアの提供が昨年の春というタイミングになりました。ですが、新作の試作品の一部は3Dプリンターで作製するなど、お客様が目にすることのない場所でのデジタルテクノロジーの活用は進んでいました」

また、ECサイトのオープンと家具アプリ「IKEA Place」のリリースがどちらも昨年だったことも、偶然ではないそうです。

「ECサイトのローンチ以前は、カタログによる通信販売を行っていました。当時もカタログと連携したARアプリをリリースしていましたが、その精度は高くありませんでした。家具が宙に浮いてしまったり、間違ったサイズで表示されることもありました。今回ECサイトをローンチするにあたり、より精度の高いAR家具配置アプリを提供することで、お客様がECサイトを利用する際の利便性を向上できると考えました」

“98パーセントの精度”の実力を検証

「IKEA Place」の精度は98パーセント。その再現性の高さに驚くユーザーも多いといいます。BAE編集部は今回、“精度98パーセント”の実力を確かめるべく、実際に検証してみました。

まず、イケアの店内にあるリビングコーナーの一角に、陳列された商品と同じ木製のテーブルを「IKEA Place」で設置。スマホを近づけると、CGで作成されたアイテムの柄まではっきりと確認することができました。

次にテーブルではなく、布製のオットマンを「IKEA Place」で設置。そのサイズの再現度を検証するために、「IKEA Place」で表示した同じ商品を実際に同じ場所にレイアウトしてみました。

見比べるとわかる通り、サイズはほぼ完璧に再現されていました。また生地の質感や色も、高い精度で再現されていることを確認できました。

さらに使用しているデバイスを持って移動すれば、360度視点で配置イメージを確認できるため、家具の設置後のスペースに「どれくらい余裕を持てるか」まで事前に把握することが可能です。また色の再現性も高いため、現在の自宅インテリアとのカラーコーディネートを事前に確認することで、「色選びで迷わなくて済む」というメリットもあります。

同アプリを活用すれば、消費者はこれまで以上に「安心して商品を購入できる」でしょうし、今後利用が広まれば、消費者行動にさまざまな変化を及ぼしていきそうです。

今後さらに高まるARの可能性

最近ではVRも大きな注目を集めていますが、家具に関しては、消費者行動に影響を与えやすいのは“AR”の方が適していると鈴木さんは語ります。

「VRは、目に映るすべてが仮想世界で構成されています。そのため現状は、自宅のリビングに家具を配置するといったバーチャル体験はできません。あくまで知らない誰かのリビングを訪れることになってしまいます。その点ARは、リアルとバーチャルの融合によって成り立っていますから、ユーザーはより現実に近い結果を知ることができるため、実際の消費行動にも移しやすいと考えています」

さらに鈴木さんは、高い精度を実現した同社の家具アプリを通じ、「ARアプリ自体にも、大きな可能性を感じている」と言います。

「イケアはこれまでデジタルテクノロジーに積極的に投資をしてきた企業です。今回、当社の家具アプリの精度が98パーセントを実現したことは、今後さまざまなARアプリでも同様の高い精度を誇るものが登場することを示唆していると感じています。たとえば、テレビにスマホのカメラをかざすと、商品と価格が表示される、という未来もそう遠くないと私は思っています。ARが今後どのように活用されていくのか、個人的にも楽しみです」

現在、AR技術を利用した「地図アプリ」や「美術鑑賞アプリ」「仮想試着アプリ」なども登場しており、ARは人々の生活になじみ始めています。今後、その精度は高まり、さまざまな形で消費者行動に影響を与えていくのではないでしょうか。また、ARアプリを活用すれば、利用したユーザーの細かいデータを収集することも可能です。その情報を活用したプロモーションの可能性も同時に広がっていきそうです。

Written by:
BAE編集部