2018.03.02

「瞬間判断力」の高いスマホ世代に響く、3秒動画の威力

スクロール中に動画が完結するGIFの強み

短くループするGIF動画がスマホ世代の若者たちの心を捉えています。一昔前のテクノロジーともいえるGIFがなぜいま受けているのでしょうか。GIF動画のプラットフォーム「GIFMAGAZINE(ジフマガジン)」の代表取締役社長 大野謙介さんにお話を伺いました。

スマートフォンの普及によって起きたGIFの再評価

「GIF」というファイルフォーマットが生まれたのは約30年前。インターネットやWeb広告に長く関わっている方が聞くと、懐かしさを感じたり、「バナー広告の表現手法」としてのイメージが強いかもしれません。しかし、2011年以降のスマートフォンの普及から、「ファイルフォーマットとしてのGIF」ではなく、短くて、ループするという「体験としてのGIF」の特性を生かして、インターネット上でさまざまな作品が創作され、単なるファイルフォーマットの枠を超えたポップカルチャーとして浸透し再び若者たちの間で評価が高まっています。

2017年にはLINEのカメラに手軽にGIF動画を作成できる機能が追加されました。さらに、昨年からブームとなっているInstagramの「ストーリー」に、GIFのように動画がループされる「ブーメラン」や、動画に動くスタンプを貼れる「GIFスタンプ」といった機能が搭載されたことも、このトレンドを象徴する動きです。

GIFをファイルフォーマットではなく、一つの体験として捉えていると語る大野さん

GIFMAGAZINEは、一般ユーザーからの投稿作品の他、出版社や芸能事務所、スポーツチームなど、さまざまな企業とコラボして制作された作品が日々アップされる、2013年スタートのGIFプラットフォーム。代表の大野さんは、スマートフォンの普及とともにGIFの価値が見直されていったといいます。

総再生回数1.6億回、月6,000万再生を誇り、アジアで最大級のGIFプラットフォームとなっている

「創業当時は、GIFといえば広告バナーの表現としてのイメージが大きく、コンテンツやコミュニケーションの手段としては認められていない状況でした。しかし、スマートフォンの登場などデバイスの変化によって、人々が映像に触れるシーンが増えていく中で、GIFのような体験は間違いなく価値が高まっていくだろうという確信がありました」

実際に、Googleのキーワードトレンドを調べると、スマートフォンが普及し始めた2011年を境に、GIFの検索数が急上昇しています。

スマートフォンにより、個人がいつでもどこでも動画を手軽に視聴できるようになりました。移動中や待ち時間など、スキマ時間に動画を楽しむライフスタイルは、短時間で瞬間的に楽しめるGIF動画の特性とマッチしています。スマートフォンの普及が、GIF再評価の下地となったといえそうです。

スマホ世代は「パッと見」で理解したい

GIFMAGAZINEユーザーの70%は18〜34歳。若い頃からインターネットやスマートフォンに親しんでいる年齢層です。彼らはGIFのどこに魅力を感じているのでしょうか。

GIFMAGAZINEのユーザー属性

「通信の高速化で大容量のムービーを手軽に楽しめるようにもなりましたが、一方で若者たちには通信制限という問題があります。通信量を消費する長尺の動画を避ける傾向にあるため、短くてサクッと楽しめるGIFコンテンツは彼らの視聴環境に合っているんです。

また、スマホ世代は同時に多くの情報に接し処理することに慣れています。実際、いまの中高生の生活を見ていると、スマートフォンを操作しながら、テレビを見つつ、親との会話を成立させるということが自然にできているんですよね。ビジュアルコミュニケーションに長けていて、例えばテキストでも、どんどん読み飛ばしていく。たくさんの情報の中から瞬発的に必要なものを取捨選択していくという彼らのライフスタイルにおいて、パッと見で理解できるGIFのようなコンテンツ体験は向いているのです」

その上で、大野さんは若者たちに受けやすいGIF動画の特徴を3点挙げます。

見られるGIF動画の三原則

  1. 1)3秒以内である

  2. 2)ワンメッセージである

  3. 3)ループする

「3秒というのは、タイムラインでスクロールしているときに、動画が画面の中で完結する長さなんですよね。1度目で『ん?』と気になって、2度見て、3度目で理解する。この体験に最適なのが3秒という長さなんです」

「PATTAN-シティコンパクト・ベビーカー」のGIF動画。商品の機能が一目でわかる内容になっている

「ワンメッセージというのは、この動画は何が面白いのかという点を明確に1つ込めることです。ネタを盛り込みすぎても、見ている側は情報処理が追いつきません。さらにGIFはループされることが前提なので、繰り返される面白さがあるとより印象づけられます」

GIF動画は認知、関心の獲得に効果あり

GIF動画は企業のプロモーションでどのような効果を発揮するのでしょうか。例えば、GIFMAGAZINEさんがコラボをした代表事例として、サッカークラブチーム「川崎フロンターレ」との取り組みが挙げられます。

これは、川崎フロンターレ20周年の話題づくりとして作成された動画で、ポータルサイトのみならず、各種SNSで配信。浮世絵風のタッチで人気選手が蹴鞠をする様子を描いたこの動画は、サッカーファン以外へもチームの認知を大きく広めたようです。

「いわゆるAISASと呼ばれる人の購買行動で見たときに、GIFは認知(Attention)、関心(Interest)に大きく寄与する施策だと思っています。3秒という短い時間で見てもらい、覚えてもらう。実際、GIFがどれだけリーチしたかというデータを取ると、好意的な結果が得られています」

短い時間で、印象的な動画が繰り返しリピートされる。それによって消費者に深くブランドや商品を印象づける効果が期待できそうです。

また大野さんは、GIFコンテンツを用いたプロモーションの可能性について、次のように語ります。

「SNSや記事コンテンツなどWebだけでなく、街頭ビジョンや交通広告などのデジタルサイネージ。さらには、小売店の什器にも重要な役割を果たすのではないかと思います。店頭では、1分でもお客さんに立ち止まってもらうことは困難。そんな中、通り過ぎる3秒で伝えたいメッセージを適切に伝えることができるGIFの表現は強みになるでしょう」

「配れるGIF動画」は、角度によって絵柄が変わるノベルティでGIF動画を表現

GIFクリエーターによる表現の可能性

クリエーターたちによる、GIFならではの表現方法の進化にも注目です。

「漫画家、フォトグラファー、映像作家、はたまたコスプレイヤーなど、ここ数年でさまざまなタイプのクリエーターがGIFの世界に参入し、作家として活躍されています。また、GIFの表現は国境を越え、ボーダレスでもあるので海外のクリエーター作品もGIFMAGAZINEには集まってきます。
表現手法も進化して、例えば「シネマグラフ」という静止画の中の一部だけが動くという不思議なアニメーションも人気があります」

3秒という制約の中で、いかに興味を引く映像を作るか。まさにクリエーターにとっては腕の見せどころ。さらにGIF制作はグラフィックと動画の両方の能力が必要とされる新しい表現領域ということもあり、作家さんにとっては挑戦しがいのあるジャンルだといえそうです。

「アートやエンタメなど、これからもGIFの世界で新しい表現がどんどん開拓されていくでしょう。‟伝えたいメッセージを、どの手法で伝えるのか“、その選択肢としてGIFの可能性は広がっていくと思います」

瞬発力があるショートムービー。
スマホ世代特有の情報への接し方とマッチした表現方法として、GIFは新しい価値を獲得しています。3秒で人を惹きつける、その特性を生かし、今後はスマートフォンのみならず、店頭やデジタルサイネージでの活用、また国境を越えたコミュニケーション手法としても活用の広がりが期待されます。


記事トップ画像=瀬川三十七

Written by:
BAE編集部