2018.04.16

アメリカで加速中の「ペットテック」。日本の現在地とは?

高まるペット需要に応じて、2018年は「ペットテック元年」に

アメリカで昨今、大きな注目を集めているのが「ペットテック(ペット×テクノロジー)」です。その背景には、アメリカのペット関連ビジネス市場が、昨年の時点で700億ドルに迫るほどの巨大市場に成長していることがあります。

日本でもペットを飼っている世帯は多くあります。では、日本においての「ペットテック」の現在地、ニーズはどのようなものなのでしょうか?

愛犬の気持ちに寄り添う共感デバイス「INUPATHY(イヌパシー)」を開発している株式会社イヌパシーの広報・山入端 佳那さんにお話を聞きました。

目次

日本は今年が「ペットテック元年」に?

株式会社イヌパシー 広報 山入端 佳那さん

「ペットテック」の利用が広がりつつあるアメリカの飼育犬数は、8500万頭以上だといわれています。一方、日本の飼育犬数は1000万頭。人口の差が約3倍なのに対して、飼育犬数は約8倍と、いかにアメリカでペットを飼うことが一般化しているかがうかがえます。

日本でもペットの家族化が進み、ペット専用のサービスも徐々に浸透しつつあります。しかし日本では、ペットテックはまさに「これから」の状況だと山入端さんは言います。

「IT業界で『ペットテックが熱い』と言われるようになったのは、ここ3〜4年のことです。現状はアメリカが先行していますが、日本もペット関連市場は年1パーセントずつ拡大し、現在1兆5000億円ほどだと言われています。以前はなかったペットに優しいフードやペット用品のニーズも高まっていますので、日本でもペットテック需要は高まるものと予想しています」

ペットテックは現在、GPSやWebカメラを利用した「見守り系」と、自動的にエサを与える「給餌(きゅうじ)系」の2つに大きく分類されます。最近だと、大手メーカーから「見守り系」のプロダクトが発売されるなど、徐々に日本でも製品が増え始めていますが、決して多いとは言えない状態です。

「おそらく今年、来年あたりには日本でも多くのペットテック製品がリリースされるはずです。それを機に、日本でもペットテック盛り上がりを見せることが予想できます。日本は、まさに今年が『ペットテック元年』になる可能性も大いにあると考えています」

「ペットは言葉を話せない」。そこにニーズがある

同社の「INUPATHY」は、見守り系にも給餌系にも属さない独自のプロダクトです。HRVシステムと呼ばれる心拍変動解析により、犬の気持ちを判断。「リラックス、ドキドキ、ストレス、ハッピー、興味」の5つの感情を、色によって知ることが可能です。

「心拍数と感情の関係性は、すでに人間での研究が進んでいる分野で、それを犬用に応用したのがこの製品です。人間と違い犬は毛で覆われているため、心拍を計測するのが難しいとされていましたが、特殊なセンサーを開発することにより、心拍数の計測が可能になりました」

デバイスを装着すると、センサーを通して犬の心拍を測定。色で犬の感情がわかる

人間と犬の関係は、縄文時代から1万年以上続いているといわれています。これまで長きにわたり、“想像だった犬の感情”が、テクノロジーの発達によって、ようやく解明されてきたのです。

「INUPATHYの機能を実現しているのは、独自に開発した解析アルゴリズムによるもの。何をしているときに、どんな心拍数になっているか、というデータを積み重ねることで感情を視覚化しています」

現在も犬用の万歩計はあり、活動量を知ることはできます。しかし、感情を知れるものは多くありません。そのニーズは確実にあると山入端さんは語ります。

「アメリカの展示会に出展した際には、非常に大きな注目を集め、海外のニュースでも紹介していただきました。ペット保険の登場などからもわかる通り、現在ペットを家族の一員として迎えている家庭は多くあります。だけど、彼らは話すことができません。愛する家族が何を考えているのかを知りたいのは当然の流れです。『ペットの気持ちが知りたい』というニーズは、世界的に進むペットの家族化の中で高まっていくものと考えています」

ペットは言葉が話せない。だからこそ、ときに“心配になる場面もある”ものです。

「たとえば犬が吠えているとき、なぜ吠えているのかわからないと、飼い主は不安になります。犬の感情がわかればどうでしょうか。どんな状態でなぜ吠えたのかを考える機会になります。何を求めているか想像し、愛犬の環境をよくするにはどうすればいいのかを考えることで、飼い主も愛犬も不安が少なくなり、より充実した生活を送ることができます」

つまり、ペットテックのニーズが生まれるのは、「ペットは言葉で人に何かを伝えることができない」という背景があるからです。だからこそ、人間とのコミュニケーションをサポートするプロダクトが求められるのです。

今後、新たなサービスが生まれる可能性も

では「ペットテック」は、同じく最近話題の「ベビーテック(赤ちゃん×テクノロジー)」と、何が違うのでしょうか?

「ベビーテックも見守り系など、似たようなプロダクトが登場しています。どちらも“楽をしたい”ということではなく、“愛する家族のことをもっと知りたい”というユーザーのニーズにIoT製品が応えている点では共通しています。ひとつ違う点は、赤ちゃんは成長し、いつか言葉を話せるようになりますが、ペットは永遠に言葉を話せるようにはなりません。だから生涯にわたって、飼い主は愛犬の気持ちに寄り添い続ける必要があるのです。子犬から老犬になるまでですから、ペットテックと飼い主とのお付き合いは、必然的に長くなると言えます」

今後、ペットテックを活用した新たな可能性についても、山入端さんは示唆します。

「アメリカでは、犬用の駐車場ならぬ“駐犬場”があります。一方、日本は犬の介護サービスが充実している、という特徴があります。ペットテックを含め、さまざまなサービスが世界に広まることで、その国ごとに独自の新しいサービスが生まれるはずです。そしてペットテックの利用が定着することで、愛犬の生活はもちろん、飼い主のライフスタイルも進化し、より充実したものになると考えています」

今後テクノロジーによって、ペットを飼いやすい環境が整備され、さらに人間と犬の距離は近づいていくことが予想されます。確実に市場が拡大しつつある「ペット関連市場」に着目すれば、“ペットにとって、うれしいこと”が、そこで暮らす“人にとっても、うれしいこと”になるケースもあるでしょう。

カフェなどで時折見かける「犬OK」の表示は、今後さまざまな場所に広がり、集客を手助けする可能性もありそうです。またその場所ではきっと、多種多様なペットテックが居心地のいい環境をサポートしてくれるのではないでしょうか。

Written by:
BAE編集部