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2017.10.16

ジェネレーターに秘められた可能性、新ロゴデザインの開発(第3回)

第3回:人間のデザインと機械のデザイン

コンピュータがジェネレートしたイメージを企業のCI・VI(ロゴ)にすることは可能なのか? 今年、新体制になった電通テックは、1000人弱の全社員の名刺をまったく違うパターンで作ってしまった。ジェネレーティブなイメージを表現として成立させるために、電通テックが挑んだ方法とは。

部署と個人をどう表現するかパラメーターとの格闘

シリーズ最終回ではロゴジェネレーターに携わった関係者に集まっていただき、その証言を座談会形式でお届けします。

茂出木 デジタル領域の表現をコーポレートアイデンティティに据えると決めたことがまずすごいですよね。新しい表現領域のものをいきなりど真ん中に持ってくるのがカッコイイ。なかなかこの規模の会社で出来ることじゃないと思います。
隈部 人間が予想外のことをしたいと思ってデザインをする一方で、ジェネレーターを通して出てくる新たな予想外も内包されている。そこが面白いところのひとつだと思います。
川原田 実際に僕が作った円環は、デザインとしては成り立っているんだけど、パターンとしての面白さは、ジェネレートされたものを見た瞬間に負けたと思いましたね(笑)。人間の手では作れないです。
デザイナーが作った円環(左)と、プログラムによってジェネレートされた円環(右)の一例 デザイナーが作った円環(左)と、プログラムによってジェネレートされた円環(右)の一例。
隈部 コンピュータで作っているのに、ちょっとライブ感があるんですよ。
茂出木 その揺らぎは難しいですよね。
川原田 デザイナーが「こういうものを作ってください」とプログラマに依頼するのではなく、話し合いながら徐々にデザインのルールが出来上がっていくところが特徴的でした。僕の仕事は「どこまで規定するのか」を考えることで、仕上がりはジェネレートを待つだけだから、手を動かす出番は少なかった(笑)。
茂出木 そこはやっぱり、Qosmo の「プログラムを信じる」という姿勢を大事にしていることが影響しているんだと思います。完成形のために何かが必ず出るプログラムを書いていくというよりは、もう少し広いルールでプログラムを作っていって、あとはお任せ、マシンを信じる、という思想がベースにあるのがすごく面白いんですよね。
西田 ガッチリしたプログラムだと綺麗なものができるけど、ジェネレートされるものに自由度を持たせると、異端なものが出てくれる。プログラムが生き生きしているんですよ。
浦川 僕らはコンピュータのことを信じているし、企業のイメージを作る上で電通テックさんがそれを信じてくれたのがうれしかった。今回は機械がやりたいことというよりも、人の想いというか、やりたいことを重要視していて。円環に個人情報を反映するコンセプトも、ジェネレーターのデザインも人間がやっていますから。今回コンピュータがやったのは、みんなの個人情報を吸い上げて入れるところ。その分、「何のためにこれを作っているのか」「どういう思いで作っているのか」というところにすごく時間をかけられたので完成度が高くなりました。
隈部 デジタルだから冷たいとか、人間ぽくない、ということはなくて、むしろ逆なんです。色々なジェネレーターの事例を見せていただいた時に、本当に命みたいに見えるなと思ったんですね。それこそ人工知能とかプログラムが進化して、形を変えていったりする姿というのは、今まで人間が考えてきたデザインのゴールに向かうことと、もっと違うベクトルがあるんじゃないか、という可能性を感じました。見たことのないものがこれからどんどん出てくのではないかという可能性を感じて、毎回検証を見せてもらう打ち合わせがすごい楽しみだったんです。
西田 ジェネレートされたイメージを見ると、実はコンピュータの表現のほうが、自然界に近い事象の表れなんじゃないかと思いますね。黄金比とか、植物の葉がフィボナッチ数列で出来ているとか、人間の手で作られたもの以外は大体、数式で最適化された形のルールがあるというのは今回すごく感じました。円環というのも原始の電子・分子っぽいですし。
茂出木 プレビューは毎回すごく沸いたんですよ(笑)。デザイナーが「負けたー!」って叫んでました(笑)

これからのデザイナーに求められる在り方とは

隈部 このプロジェクトをやってみて、デザイナーとして、何万種類ものデザインが、3分で生成されてしまう姿を見た時にすごく衝撃を受けました。ここには今後、デザインにおける方向性や手法、未来の姿が変わっていく可能性が秘められている。だから、デザイナーの今後の役割を本当に真剣に突き詰めなければいけないタイミングなんだなと。それについてT WOTONE さんQosmo さんの見解をお聞きしたいです。
茂出木 これからのデザイナーに求められるのは、ルールやシステムを作って行くところになるでしょうね。1000パターンのグラフィックを実際に作るのではなく、それができる状況を作るのが仕事になる。普段僕らがやっているのもグラフィックやWebのUI もルールを決めて全体を作るという領域なんですが、今回のプロジェクトで面白かったのが、その逆だったこと。最後に全部人の目でチェックをして、これなら表現として成り立つね、と確認したところだと思ってるんです。システムも人間も、両方がないとダメなんだな、と再認識しました。
西田 隈部さんたちが、膨大に生み出されるジェネレーティブなグラフィックの一つひとつが主役になるという捉え方をしていることにハッとさせられました。僕達デジタルの人間は、たくさんの情報量を見ている間に、いつの間にか個ではなく量として見ていた。そこを一つのグラフィックとして見るということを、改めて勉強させられました。受け取った人が持つ印象や、絵として成立しているのか、という部分は人間の担当ですよね。
浦川 そこに人間の意思があるんだよね。
西田 かっこいいけどただの背景になっているとか、円環が象徴になっていないとか、「人間がどう受け取るか」の部分を判断できるのがデザイナーの役割。堂園さんのようにプログラミングも出来ると、それを感じながらシステムを作ることができるんですよね。ジェネレーティブというのは、デザイナーの手法の一つが成長していっているということで、今後は人工知能も当然のように使うようになるでしょう。でも仕事の本質は変わっていないのかなと。
堂園 「ジェネレーティブな表現」は、1960~70年代からコンピューターアートの人たちがやって来たことと今も本質的には変わってないなと思っていて。「巨人の肩の上に立つ」という言葉のように、その肩の上で自分が何が発見できるかということを考えているんです。今はプログラムを「ツール」として扱っていますが、今後は人間と対話するものというか、「想像力を拡張していくもの」として扱っていくと、よりデザインが発展していくでしょうね。
茂出木 デジタルのツールを使ってイメージ通りに作っていくことはもう当たり前になりました。そういう状況に、何となく飽きが来ているという状況もあるんじゃないでしょうか。現実と見紛う3DCG の映画や完璧に修正された広告写真のようなイメージに食傷気味なのかもしれません。そこで、先ほど「自然に近い」と言われたジェネレーティブされたイメージにワクワクするところがあるんじゃ ないかと。
浦川 普段の仕事も、僕らは人と機械の中間にいることが多くって、迷うこともあるんですけどね。極端な人になると、もうちょっとプログラムを信じてもいいんじゃないかという意見になるし、そこは揺れるところです。
隈部 TWOTONE さんにご相談に行った段階では、ロゴとVIの企画の根幹と新しいことをやりたい、変わったことにチャレンジしたいといと言う思いをぶつける形でした。その後、本質的に伝えたいことをセグメントしてくれたり、軌道修正してくれたり。キャッチボールをしながら、しかもそこに新しいテクノロジーとかプログラムなどの要素を加えながら、常識にとらわれないものを作ることができた。それはやっぱり、このチームだったからだと思うんです。この三社がそれぞれ、できる得意なことを目一杯出せば、世の中から「変わったことしてるね」とか、「新しいことにチャレンジしてるね」と思ってもらえるのではないかと。全面的に信頼していました。
徳久 この短期間で作る事ができたのは、私たちがやりたいことを完全に共有して、一緒に作る事ができたからなんだろうなと。最後の最後にも社内で変更の要望が出て、納期まで数日のタイミングだったので諦めていたんですが、変えることが出来たというのがすごく驚きでした。「さすがにもう無理だよ」と言っていたんですが、出来てしまった(笑)。

ーちなみにこのジェネレーターを一般に開放する案もあるとか?

隈部 出来るといいな、という話をしているんです。電通テックのウェブサイトにジェネレーターを入れるとか・・・
茂出木 採用のコンテンツにあったらいいですよね。テックを希望している子たちが自分の名前で円環を作ってみたりして。
川原田 そうですね。色々と取組んでいきたいと思います。

世界的にも例がない、1000人弱の社員のために、個々にデザインされた名刺。ジェネレーティブによるグラフィックの展開はアイデア自体は60年代からあったものだが、マシンの進化によって何万ものグラフィックのパターンが瞬時に生成され、クライアントとの話し合いのもとデザインに落とし込む…それが実現されたのがまさに現代的だ。今後この事例が先駆けとなり、より先鋭的なプロジェクトが生まれることを期待したい。

TWOTONE
株式会社ツートンhttp://www.twotone.jp/
デジタル領域を軸とした、コミュニケーションデザインを構築するデザインスタジオ。 ウェブ、アプリ、映像、グラフィックなどの分野で、企画・設計・アートディレクション・デザインを守備範囲とする。 国内外の広告賞/デザイン賞多数受賞。
茂出木 龍太アートディレクター / 代表取締役
2010 年TWOTONE INC. 設立。インタラクティブコンテンツのディレクションや、映像の企画演出を手がける。
西田 悠亮アートディレクター/ デザイナー
2011 年TWOTONE 入社。ウェブUI、アプリUI デザインを中心に、企画、映像編集、撮影なども行う。
廣瀬 健デザイナー
2015 年4月TWOTONEに入社。モーショングラフィクスや3DCG 制作を得意とする。
株式会社 コズモhttp://qosmo.jp/
2009 年設立。創作の過程にアルゴリズムを介在させることで、新しい気づきや視点をもたらす表現を実践する。 近年はComputational Creativity and Beyond をモットーに、AI を用いた作品制作、アルゴリズミックデザインなどを手がける。
浦川 通テクニカルディレクター
2013年早稲田大学大学院修了。基幹理工学研究科・数学応用数理専攻。
堂園 翔矢プログラマー
2016 年Qosmo 参加。高次元空間のビジュアライゼーション等、プログラマーとしても活動。
株式会社 電通テックhttps://www.dentsutec.co.jp
プロモーション×デジタル、最先端の専門性で、顧客企業の多様な課題に応じた最適なソリューションを企画から実施までワンストップでご提供。
隈部 浩クリエーティブディレクター / アートディレクター
ロゴを中心としたコミュニケーション全般を担当。
徳久 正樹プロデューサー
今回のVIリニューアルプロジェクトのプロデューサーを担当
川原田 俊アートディレクター/ デザイナー
クリエーティブセンター所属。広告制作、商品開発、キャンペーン企画、グッズ制作などを担当。
Written by:
齋藤 あきこ
Photographer:
YOSUKE SUZUKI

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