2017.12.27

ロールプレイングシネマに見る「内容がわからない」という価値

情報社会の現代にマッチした若者目線の戦略で集客を実現

「時代はモノ消費からコト消費へ」。その言葉通り、いま東京ではコトがあふれ、無数のイベントが実施されています。

そんななか、著名人を起用するわけでもなく、活発な宣伝活動もせず、注目を集めたイベントがあります。それが「ROLE PLAYING CINEMA/ロールプレイングシネマ」です。

2017年12月2日(土)、高円寺駅周辺で開催された同イベントは、誰もが知っている名作映画の世界観を複数の会場を舞台に再現し、参加者は物語の主人公となってその世界をロールプレイングできる体験型の映画イベント。第1弾は映画『セッション』を題材にしました。

イベントは1日のみの開催でしたが、構想約1年、一切の妥協なく、プロジェクトは進められたと言います。

結果、緻密な戦略も功を奏し、SNSで情報が拡散。イベント当日はキャンセル待ちが出るほどの盛況だったそうです。このイベントを仕掛けたのが、ロールプレイングシネマ実行委員会。平均年齢27歳の彼らに、「ロールプレイングシネマはなぜ人を動かしたのか?」を聞きました。

目次

重視したのは、「自分がシェアしたくなるかどうか」

「ロールプレイングシネマ」は、大手IT企業で同僚だった阿久澤拓巳さん、城紀実さんの2人が考えた企画。そこに、イベントプロデューサーの広屋佑規さんが合流し、「ロールプレイングシネマ実行委員会」が誕生した

――「ロールプレイングシネマ」はSNS上で企画が話題となり、第1弾にもかかわらず、早い段階でチケットが完売しました。イベント開催前のプロモーションでは、どんなことを意識していましたか?

イベントを通じてもっとも大事にしたのは、「人にシェアしてもらえるかどうか」です。SNSで流れてきたときに、「自分がシェアしたくなるかどうか」という視点で常に物事を考えていました。Webサイトも、見ただけで「行ってみたい」と思えること、「シェアしたい」と思えることを重視しました。また、SNSで拡散できる画像を作り込むことも意識した点です。

阿久澤

今回は『セッション』を題材にしているのですが、映画の配給会社さんに「あのインパクトのあるビジュアルを使用したいと」連絡したところ、使用承諾をもらうことができ、映画の素材を宣伝に使えたことも大きいですね。

配給会社から許可を得て作成した、イベントのキービジュアル
阿久澤

他にもリリースを作成し、各メディアにお送りしたところ、記事化していただけたことも認知拡大につながりました。

広屋

情報が上手く拡散した理由として、そもそものネーミングの良さもあると感じています。「ロールプレイングシネマ」と聞くだけで、映画の世界に入れるかもしれないといった“ワクワクする”ような高揚感がありますし、イベント内容にも興味が湧きます。現在、SNSのタイムラインには無数のコンテンツが溢れています。そのなかで目立つためには、“ネーミングとキービジュアルがキャッチー”であることは、必要不可欠な要素だと考えました。

「内容がわからない」という価値

――結果、イベントはSNS上で話題となりました。その最大の理由とは何だとお考えでしょうか?

今回、「あえてイベント内容の詳細を伏せた」ことがSNSの拡散につながったと感じています。参加した人だけしか知り得ない情報を、参加した人は「言いたい」という衝動に駆られたんだと考えています。

広屋

僕自身は、他にも体験型イベントを主催しているのですが、実は今、体験型イベントですら飽和状態にあると感じています。どのイベントも参加者に能動的に体験してもらうための施策や、写真を撮ってもらうためにフォトジェニックなオブジェクトを置いていますし、内容も「これでもか!」とわかりやすく公開しながら事前告知を行っています。だからこそ余計に「内容がわからない」ということに、面白さや価値が生まれたのではないでしょうか。

題材にした映画も良かったと思います。何となくみんなが好きな映画ではなく、好き嫌いがはっきりわかれる映画。『セッション』はまさに、そういう映画ですし、イベント内容の詳細がわからないので、参加者の方は「えっ、怒られるの?」と思ったはずです。「何が起きるんだろう?」とドキドキするような映画をモチーフに選んだことも、成功した大きな要因のひとつだと感じています。

阿久澤

しかしその「内容がわからない」というフックも、コンテンツ自体が面白くなければ、何の効果も発揮しません。ですから1日のイベントのために、演出家を立て、脚本を用意し、出演する役者もオーディションして選定しました。

その後、俳優陣には約1ヶ月の稽古を実施したのですが、そこでは「物語を展開するため」に、映画の世界観のなかで、イベント参加者と臨機応変に会話するための即興劇のような稽古を繰り返しました。

結果、「映画を体験する」という経験を、イベントを通して多くの参加者の方にお届けすることができたと思います。

イベントによって高まった“没入感”

――「内容がわからない」イベントに参加した、参加者の方の反応は実際いかがでしたか?

とても良かったと思います。イベントではまず、グループごとにわかれて会場を回り、そこで『セッション』の世界を体験し、最後は全員が1ヶ所に集い、映画『セッション』を鑑賞しました。

私たちはライトにゆるく映画を見てもらえればと思っていたのですが、参加者の方は真剣に作品を鑑賞している様子でした。特に、イベント内で遭遇した似たようなシーンでは、会場には大きな笑い声が響いていました。それだけイベントを通じて、より映画への共感性、没入感が高まった証拠だと思います。その姿に、「体験型映画イベント」の魅力を楽しんでもらえたと実感することができました。

阿久澤

イベント後に、SNSに感想をアップしていた方も多かったですし、参加者の方の満足度は総じて高かったと感じています。

広屋

おそらく「内容がわからない楽しさ」を作れたのは、“東京だから”ということも起因していると思います。それほど東京はイベントがあふれていますから。

もしいま、地方で「内容がわからないイベント」を開催しても、“面白そう”とは感じてもらえず、“怖い(不安)”という印象を持たれると思います。時代、場所、客層、映画選び、すべてが上手くはまったからこその結果だと考えています。今回の経験を第2弾でも反映し、さらにイベントをパワーアップさせていきたいです。

検索時代だからこそ生まれた価値

現代は、疑問や不明点があれば、検索するのが当たり前の時代です。しかし「ロールプレイングシネマ」は、いくら検索しても詳細は一切ネットに出ていない。あえて内容を伏せたことで、“参加して内容を発信したい”という欲求が参加者に生まれ、イベントは成功しました。今後「わからないという価値」は、東京においてさらに高まっていくのではないでしょうか。

ロールプレイングシネマ実行委員会

大手IT企業で同僚だった城紀実(しろ・ことみ:写真中央)、阿久澤拓巳(あくざわ・たくみ:写真左)が「ロールプレイングシネマ」の企画を考案。そこにイベントプロデューサーの広屋佑規(ひろや・ゆき:写真右)が合流し、2017年に結成。第1弾「セッション×高円寺」は、初回にも関わらず全席完売。現在、第2弾を準備中。

Written by:
BAE編集部