2017.09.22

超文系社員が挑むAIプログラミング。「コンピュータ大貧民大会」への道!!(第一回)

プログラムがトランプゲームでバトルする『コンピュータ大貧民大会』って?

齋藤真祐美

P&E部門 デジタル・マーケティングセンター

2016年に電通テックに入社。ダイレクトプロモーション部署に所属し、eCRMを中心とした制作・分析業務にあたる。たまに舞台俳優(自称)。愛読書は太宰治『きりぎりす』、三島由紀夫『花ざかりの森・憂国』。

超文系の若手電通テック社員が、超理系イベントである「コンピュータ大貧民大会」(注1)に挑戦! イチからAIについて勉強する過程で、いま話題となっている「AI」の基礎の基礎を、新人ならではの目線で分かりやすくご紹介する全4回のシリーズです。

目次

人工知能がプロ棋士を負かす時代……「AI」ってなんだろう!?

皆様こんにちは。電通テック2年目社員の齋藤です。

突然ですが、「AI」って何だと思いますか?最近、右を見ても左を見ても、AIの話題ばかり。私達が「AI」に抱いているイメージと言えば、形は無いけれど、人間の頭脳を超えた思考を繰り広げるものでしょうか。
あるいは、生活や仕事の手助けをしてくれる便利なものでしょうか。
「AI」はそのミステリアスな思考と、人間には思いもかけない答えをアウトプットする点から、SFをはじめとする多くの作品に登場してきました。
昨今では、「AI」が小説を書いたり、将棋の試合でプロ棋士に勝利したりと、AIが人間の仕事を奪う!?という噂もあったり……。

AIってこんなイメージですか!?

では、実際のところ「AI」は何をどう考えているのでしょうか。
「AI」が提示する多様な解決策を導き出す思考方法に、セオリーはないのでしょうか。
こういう方法で考えると、良い解決策を導き出しやすい、という法則がきっとあるはずです。そして、「AI」はその法則を「知っている」のではないでしょうか。

そうとなれば、「AI」のことをよく知り、学ばなければなりません。
どうしたものか、と思っていたところ、耳にしたのが「コンピュータ大貧民大会」(正式名称:「UECda-2017」)のこと。電気通信大学が主催している大会で、トランプゲームの「大貧民」をテーマに、参加者たちが作成したプログラム同士が「大貧民」で競うというコンテストだそうです。

「UECda-2017」の公式サイト

AIが「大貧民」でバトル!?

理系知識にはまったく疎い私ですが、「大貧民」なら何度も遊んだことがあります。
というわけで、無謀にも今年11月に開催される本大会に挑戦! 悪戦苦闘する中で、AIについてもっと詳しくなれるのでは、フレンドリーになれるのでは……という目論見です。

さて、記念すべき第一回のこの記事では、電気通信大学での人工知能研究の第一人者であり、「AI大貧民大会」の運営もされている西野哲朗先生にお話しをうかがいます。そして、西野先生のご研究内容と、私が挑戦する「コンピュータ大貧民大会」の成り立ちについてご紹介いたします。

人工知能の研究にもさまざまな領域がある

電気通信大学 西野哲朗教授
齋藤

まず、西野先生のご研究内容について教えていただけますか。

西野先生

分野としては、大きくいうとコンピュータサイエンスというものになります。コンピュータの基礎理論から応用までを考えるもので、すごく広い分野です。その中で、最近、特に力を入れているのが人工知能の領域です。人工知能といっても様々な研究がありますので、さらに細かく言うと、「ゲーム情報学」と「自然言語処理」ですね。

齋藤

「ゲーム情報学」?  なんだか面白そうですね!

西野先生

「ゲーム情報学」は、最近では「将棋や囲碁で人工知能が人間に勝つ」という話題もありますが、うちの研究室ではトランプゲームの大貧民を研究しています。大貧民の大会を運営して、大貧民というゲームの色々な性質を研究しています。

齋藤

「UECda」(以下:コンピュータ大貧民大会)のことですね。もう一つのテーマ、「自然言語処理」とはどういうものなのでしょうか。

西野先生

「自然言語処理」にも様々な研究がありますが、たとえば、コンピュータに人の言葉を理解させる、理解させたらその上で(人間からの)質問に答えさせて様々なサービスを人間に提供できるようにする。これはアプリ等の開発にも繋がる研究ですが、うちの研究室では、「NAO」(注2)というロボットに自然言語を理解させて、オープンキャンパスの案内をさせようという試みに取り組んでいます。

齋藤

こちらも面白そうですね。人間が言語能力を習得する過程を、コンピュータ上でも再現できたら、コンピュータやロボットの活用方法も広がりそうですね!

「情報」の研究に関心を持ってもらいたかった
「コンピュータ大貧民大会」のスタートはそんなきっかけから

頭脳明晰、論旨明快、博覧強記とは、西野先生のためにあるような言葉。終始、「は〜」「なるほど〜」と脳みそが活性化しまくりの齋藤。
齋藤

「コンピュータ大貧民大会」はどういったきっかけで始まったのでしょうか?

西野先生

今年で12回目になるのですが、この大会が始まる前、つまり今から13~4年前というのは、学生に情報系の研究が不人気だったという背景があります。何が原因かというと、その当時の学生が高校生の時に受けた「情報」という授業が面白くなかったんですね(笑)。

齋藤

私が学生の頃もありました。エクセルやワードの使い方を習ったような…。

西野先生

そうなんです!「情報」と言いながら、実際はパソコンソフトの使い方を教える授業でした。私が、「じゃあ今は何が人気があるの?」と尋ねると、「ロボットが好き」と学生が言うんですね。当時は、ロボコン(注3)が流行ってましたから。そこで、情報系の研究室も何かロボコンのようなイベントをしなくては、と。ロボット以外に学生が好きなものと言えば、ゲームです。

齋藤

私もゲーム好きです!

西野先生

ゲームと言っても、将棋や囲碁では、ルールが分からない学生もいる。そこで思いついたのが、トランプゲームの大貧民だったわけです。大貧民だったら、ほぼ全ての学生が遊んだことがあります。

齋藤

確かに…!

西野先生

そして大貧民は、「多人数不完全情報ゲーム」というものに分類されます。将棋や囲碁は、場に出ている情報が全てですが、大貧民は違います。

齋藤

なるほど。相手がどんな手札を持っているか、分かりませんからね。

西野先生

そうなんです。相手が何を出すかは、相手の手札によって変わりますから完全に予測することができないんです。
加えて、研究として大貧民が面白いなと思った点は、人間が大貧民をプレイする時、必ずしも勝つことが目的ではないということです。例えば、手元に長い階段があったとすると、人間としてはどうしても「この階段を出してみたいな」という風になる。将棋や囲碁はプロのゲームですから、究極的には勝つことが目的になりますが、大貧民はそうではない。そこに「人間らしさ」を見出せるのではないかと思って魅力を感じました。

構内には、これまでの「コンピュータ大貧民大会」のポスターが貼られている。

「いつの間にか、「コンピュータ大貧民大会」を開催する環境が出来上がっていたんです(笑)」(西野先生)

西野先生

そうして、当時はまだ学生だった大久保先生(注4)という方に、「大貧民を題材にイベントをするのはどうだろうか」と少し話をしたんです。大久保先生は「分かりました」と答えて、数日後、何やら研究室があるフロアの片隅で、学生たち数人と大貧民をしていました。その時、大久保先生は、「研究中です」とだけ言っていたのですが、何を研究していたかというと、ルールなんですね。

齋藤

大貧民のルールですか。

西野先生

そうです。大貧民というのは、ローカルルールがたくさんあります。高校の数だけルールがある、といわれるほどあるそうです。

電気通信大学オリジナルのトランプ。
齋藤

あ、そういえば私も高校の時に、自分の知らないローカルルールを使われてケンカになりかけたことを思い出しました!齋藤家では、「革命」(注5)も「8切り」(注6)も無いのが普通でしたから。

西野先生

大久保先生は、大会を運営するにあたって、統一的なルールを検討していたらしいんです。そこから一か月ほどしたある日、大久保先生がトントンと私の研究室のドアをノックして、「先生、できました」、と。私が「え、何ができたの?」と聞くと、「大貧民大会をする環境を構築した」と言ったんです。要するに、私が世間話的に少し話したものを、彼らは「やらなくちゃいけないもの」と思って取り組んでいてくれたんですね。そして、大久保先生は私の研究室で博士号を取る研究を続ける傍ら、「コンピュータ大貧民大会」を立ち上げたという非常にパワフルな方なんです(笑)。

齋藤

(西野先生……人たらし!)

西野先生

そういった経緯で、大久保先生が中心になって、大貧民大会が動き始めました。それが2005年の話です。なので、どちらかというと、情報系の学問の振興、高校生に興味を持ってもらおうというところから始まっています。大会が始まると、卒業論文や修士論文に取り上げたいという人も出てきますから、そういった研究に耐えうるテーマになるようにフォローをしなければならない。そこで、私の研究室でこの大貧民の研究をテーマとして取り上げるようになったんです

齋藤

つまり、大会ありきで、研究室のテーマになったのはその後、ということですね。

西野先生

そういうことです。先に大会が始まってしまったと(笑)。

というわけで、今回は西野先生に「コンピュータ大貧民大会」の成り立ちについて、じっくりお話を伺うことができました。

情報の研究に学生さんの関心を集めることがきっかけで始まったという「コンピュータ大貧民大会」。「大貧民」を題材にしたのも、誰でもプレイしたことがあるという親しみやすさが根底にあったということが分かりました。
そして、「大貧民」のプレイの中に「人間らしさ」を見出されたお話も、興味深かったです。西野先生がお話に出された、「『この階段を出してみたいな』という感情」には非常に共感しました。その階段を出すことで上がれる(=勝てる)とは限らないけれど、周りのプレイヤーに「おおー!」と言われたいがために階段を出す、そんな人間らしいプレイが大貧民の醍醐味ではないでしょうか。

つまり、「AI」に「人間らしさ」を加えることも可能、ということなのでしょうか。
奥が深いです、「AI」の世界。

次回は、コンピュータ大貧民大会のルールや、そもそも大貧民をプログラミングするってどういうことなんだ?という話を突っ込んでお伺いし、さらにAIの知識を深めていきたいと思います!

コンピュータ大貧民大会で使用された実際のプログラム
(注1) 正式名称は「UECda-2017」。毎年、電気通信大学が主催しているコンピュータ大貧民大会。プレイヤーは人間ではなく、参加者の組んだプログラム。
(注2) アルデバランロボティクス社が開発した、人型ロボット。音声認識、画像認識、通信などの機能を備えている。
(注3) 正式名称は「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」。全国の高等専門学校の生徒が手作りのロボットを持ち寄って競わせる大会。
(注4) 静岡県立大学講師。電気通信大学出身。UECda-2017の主催者の一人でもある。第二回記事でご紹介予定。
(注5,6) 大貧民のルールの一つ。詳しくは第二回記事にて記述。

 

齋藤真祐美

P&E部門 デジタル・マーケティングセンター

2016年に電通テックに入社。ダイレクトプロモーション部署に所属し、eCRMを中心とした制作・分析業務にあたる。たまに舞台俳優(自称)。愛読書は太宰治『きりぎりす』、三島由紀夫『花ざかりの森・憂国』。