2018.03.06

育児分野にもテクノロジーが進出!「ベビーテック」とは?

世界が注目するテクノロジーは、日本でも浸透するか

アメリカ・ラスベガスで開催される世界最大級のテクノロジー関連のカンファレンス「CES(Consumer Electronics Show)」。そこで近年、専用エリアも設けられるほど注目を集めているのが「ベビーテック」の分野です。

名前の通り、子育てを助けるテクノロジーである「ベビーテック」ですが、欧米とは違い、日本ではまだ、その注目度は高まっていません。

その理由を探るべく、日本で唯一のベビーテック専門メディア『Baby Tech(ベビテク)』を運営する株式会社パパスマイルの代表取締役・永田哲也さんと、同メディアの編集長・湯本堅隆さんのおふたりに、「日本におけるベビーテックの現在地、そして今後」について聞きました。

育児を助ける「ベビーテック」

左から株式会社パパスマイル 代表取締役 永田哲也さん 同 Baby Tech編集長 湯本堅隆さん

「ベビーテック」とは、妊活から出産、新生児〜小学校入学ぐらいの年齢の子育てを支援するIoTデバイスやアプリケーション、Webサービスなどを指す総称のことです。この新しいテクノロジーは「育児だけでなく、家事全般をサポートする」と、株式会社パパスマイル 代表取締役・永田哲也さんは言います。

「昔と違い、祖父母が子育てを助けてくれる時代ではありません。ベビーテックを利用することで、非常に合理的に、子どもと関わる人々の助けになり、また家事全般の効率化を実現できる可能性がそこにあります」

育児に割く精神的・時間的な負担を削減できれば、新しい余裕と時間が生まれます。その時間を、家事に充てることも可能なため、永田さんはベビーテックを「家事全般を支えるテクノロジー」と捉えているのです。

ちなみに、「ベビーテック」という言葉が初めて使われたのは、2016年、アメリカのラスベガスで開催された「CES」においてのこと。同年から「Baby Tech Awards(ベビーテックアワード)」が開催され、欧米ではすでに、さまざまなプロダクトが発表されています。
 

なお、CESが監修している「Baby Tech Awards」では5つのカテゴリーがあり、現状で「ベビーテック」と呼ばれるものはすべて、いずれかに該当します。

1.Baby Eats(赤ちゃんの食事)

搾乳の補助やアレルギーモニター、スマート哺乳瓶などがあります。「スマート哺乳瓶」は、飲んだミルクの量などをリアルタイムでスマートフォンアプリに記録できるため、子どもの健康管理に役立てることが可能です。

Webメディア『Baby Tech(ベビテク)』が紹介する、フランス発のスマート哺乳瓶ホルダー

2.Baby Learn & Play(赤ちゃんの発育)

子供たちの知育発達に貢献するおもちゃやガジェット、トイレトレーニング関連などがこのカテゴリーに該当します。

3.Baby Safety(赤ちゃんの安全)

乳幼児の安全を確保することを目指した、ベビーカーやチャイルドシートが該当します。スマートフォンと連動することで、異常があった場合に通知されます。

Webメディア『Baby Tech(ベビテク)』が紹介する、赤ちゃんの様子をリアルタイムで監視するモニター

4.Healthy Baby(赤ちゃんの健康管理)

健康状態を監視し、健康を保つためのウェアラブル体温計などが該当します。

5.Fertility & Pregnancy Help(不妊治療と妊婦さんへの手助け)

排卵日を特定し、妊活のサポートをするデバイスなどが該当します。

テクノロジーで、乳幼児の安全を確保

米国の家電量販店「BestBuy」では、すでにベビーテックコーナーが展開中

5つのカテゴリーの商品群には、共通点があります。
「ベビーテックの多くは、乳幼児の安全を確保するIoTデバイスです。乳幼児には睡眠時に呼吸を確認するなど、安全面のケアが必要ですが、それを頻繁に行うことは容易なことではありません。ベビーテックには異常を通知してくれるものもありますから、機械と一緒に赤ちゃんを見守ることで、物理的にも精神的にも、育児の負担は軽減されるはずです」(永田さん)

さらに現在、都心では待機児童問題から派生した保育士への負担増が叫ばれていますが、「そうした問題も、ベビーテックが普及すれば解決できる可能性がある」と永田さんは考えています。

現在の日本でも、十分に需要がありそうな「ベビーテック」ですが、商品化されているものは少なく、欧米ほどの盛り上がりも現状はありません。その理由をWebメディア「Baby Tech」編集長・湯本さんはこう推測します。

「ひとつは、日本は乳幼児向けの製品の認可が厳しいこと。さらに文化として、“育児は女性の仕事”という固定観念がまだまだ根強くあるのに加え、ユーザーの気持ちとしても『機械に育児を任せていいのか?』という抵抗感が存在しているように思います。家電レベルまでベビーテックが日本で浸透していくためには、テクノロジーを使った安全な“新しい育児”のスタイルを、まずは多くの人たちに知ってもらうことが必要なのかもしれません」

浸透度の違いは社会的背景の違い

ではなぜ、欧米ではベビーテックの分野が活発なのでしょうか?

「社会的な背景の違いではないでしょうか。日本では子どもが熱を出したら、近所のかかりつけ医に行きますが、海外では病院まで車で1時間以上というケースもあります。そのため海外では遠隔治療も広がっていますし、さまざまな場面でのテクノロジー利用が生活に浸透してきています。日本は現状、欧米ほど“テクノロジー利用を迫られている”状況にありませんから、その差が現れているのだと思います」(湯本さん)

一方で、日本は現在、共働きの家庭が増え、“育児も家事も夫婦でシェア”する時代に突入しています。

「仕事と育児の両立は、決して簡単ではありません。少しでも効率化するためには、やり方を変えなくてはいけないと思います。授乳や排便の記録、乳幼児の安全確認などは、人が行うのではなく、ベビーテックに任せる。子育てを経験した方ならわかると思いますが、それだけでも非常に助かるものです。しかも、そこに新しい時間が生まれるだけでなく、より安全に子育てをすることもできる。これは大きな魅力ではないでしょうか」(永田さん)

さらに、ベビーテックを利用するメリットは「効率化だけではない」と永田さんは言います。「私自身は、子育てが好きですし、楽しいと感じています。ですが、子どもといるとトイレすら好きなときに行けないといった“不自由さ”がそこにあることも知っています。そうした制約の中で、誰もが育児に奮闘しています。その負担を軽減できるのであれば、進んでテクノロジーを活用すべきだと私は思います。そうすればきっと、育児をもっと楽しくすることができると思うんですよね」

日本も5年後は「育児×テクノロジー」の時代に

もし今後、ベビーテックが生活に浸透すると、どんな風に生活は変わるのでしょうか?

「スマートハウスの一部に、ベビーテックが組み込まれると私は考えています。その頃には人工知能を持ったロボットコンシェルジュが、家事や育児の分担を提案してくれるようになるかもしれません。そうなれば、『夫婦の役割分担』もよりスムーズに決定できるのではないでしょうか。未来では、ゴミ捨ての当番決めで夫婦が口論になるなんてことは、もうなくなっているかもしれませんね」(永田さん)

「新しいことを始めるのは、いつだって新しい人たちです。ベビーテックを活用した子育ても、テクノロジーを利用することに抵抗感のない世代が子育てを始めるようになると、自然と浸透していくのではないでしょうか。ですから、すぐには難しいかもしれませんが、5年後くらいには日本でも育児にテクノロジーを取り入れる時代が訪れると個人的には予想しています」(湯本さん)

子育てにおける“見守り”をテクノロジーと協力し、育児の負担を軽減してくれる「ベビーテック」。機械ではなく、育児のパートナーとして取り入れることで、子育てがもっと楽しくなる可能性がそこにはありそうです。また、遠くない未来では、育児分野でのテクノロジー活用も当たり前となり、子どもの成長をテクノロジーと一緒に見守る時代が来るかもしれません。その頃には自宅だけでなく、顧客の利便性向上を狙った店舗での活用など、さまざまな場所でベビーテックを目にする機会も増えるのではないでしょうか。

Written by:
BAE編集部