2018.09.28

トレンド分析、予測を可能にする「外食のビッグデータ」の有効性

約8.5万店舗の情報から導き出す、商品開発・営業戦略の“最適解”

幅広い分野で活用され、耳にする機会も増えた「ビッグデータ」。そのなかで、外食の分野だけは、手付かずの状態にありました。なぜなら、個人店の多くはIT化が進んでいないからです。

しかしデータ活用のニーズが時代として高まるなかで、昨年、株式会社ぐるなびがその現状に一石を投じました。それまで同社が蓄積した飲食店の情報をビッグデータ化し、企業に提供し始めたのです。「食の分野におけるビッグデータの需要や活用法」などについて、同社のプロモーション部門 統括次長 高橋俊也さんにお話を聞きました。

目次

IT化が進んでいない業界において、画期的な外食のビッグデータ

高橋俊也さん
株式会社ぐるなび プロモーション部門 統括次長 兼 第一営業グループ グループ長 高橋俊也さん

――「ぐるなび」と言えば、1996年、個人宅のネット普及率が3.3%という時代にサービスをスタートした、グルメサイトのパイオニアとして知られています。まず、「ぐるなび」の登場によって、変化したことを教えてください。

『飲食店を訪れる前にインターネットを使って検索する』という行動をITによって定着させたことでしょう。

また以前は、飲食店は「立地が命」と言われていましたが、現在は場所が悪くても成功するケースが多くあります。これもITによる恩恵と言えるでしょう。

――そんな「ぐるなび」の事業の柱は「飲食店の販売促進支援」です。御社が“食のビッグデータ(ぐるなびデータライブラリ)”を提供するに至った経緯を教えてください。

国内の外食市場は、約25兆円とここ数年微増を続けています。現在「ぐるなび」には、全国の飲食店・約50万店の店舗情報が掲載されています。サイト上ではリアルタイムで、メニューや食材へのこだわりが更新されており、現在メニューだけでも900万を超えるデータを有しています。また、サイトのユニークユーザー数は、月間6500万人を誇ります。

ちなみに、食のデータには「一次情報」と「二次情報」があります。店舗が入力している情報が一次情報で、口コミなどユーザーが加える情報が二次情報です。「ぐるなび」では、正確でリアルタイムな一次情報を利用者にお届けしており、その保有データ数は業界ナンバーワンです。

つまり同サイト上には、店舗側の情報(場所やメニュー、商品単価など)とユーザーの情報(検索したワードや、ページの閲覧数など)が20年分蓄積されているわけです。

その膨大なデータを活用すべく、食品関連企業に対するソリューションとして昨年誕生したのが、初の外食のビッグデータ提供サービス「ぐるなびデータライブラリ」です。

――衣食住は生活の基本です。外食のビッグデータがこれまでなかったことが意外に感じます。

チェーン店は別ですが、個人の飲食店などではIT化が進んでいないケースが多く、そもそも情報を取ることが飲食業界は難しい傾向にあるんです。

そのなかで、一次情報をリアルタイムで取得・分析できるサービスというのは、当社以外では実現が難しく、画期的なサービスと言えると思います。

ビッグデータを活用した、商品開発・営業戦略の事例

――実際に、「ぐるなびデータライブラリ」はどのように活用できるのでしょうか?

「ぐるなびデータライブラリ」は、大きく3つのことができるオンラインツールです。

1.メニュートレンドの把握
2.メニューバリエーションの分析
3.店舗分析

食に関わる企業がマーケティングや商品開発に必要な情報を、リアルタイムで引き出せるオンラインツール

この情報を組み合わせることで、たとえば商品開発において「いま、何が売れているのか?」を知りたい場合、約8.5万店のメニューを瞬時に分析し、「全国、または地域ごとの人気メニュー」などを知ることができます。

そこには、前述した店舗の一次情報とユーザーの検索ログだけでなく、オフラインの情報も加味されています。「ぐるなび」は、全国21ヶ所の営業所を拠点に、営業マンが店舗を訪れ、店舗課題解決に向けた販促支援などを行っています。そこで得た“現場の生の声”も「ぐるなびデータライブラリ」に反映することで、より精度の高い情報提供を可能にしています。

以前は、企業が外食のトレンドを知りたいと考えた場合には、アンケート調査を行うことが多かったようですが、決して多くない数の回答で最適解を導き出すことは難しく、参考にはなっても、“裏付け”にはなりませんでした。しかし「ぐるなびデータライブラリ」であれば、膨大かつ長年培ってきたデータを活用することで、さまざまな事案の“裏付け”として利用することができます。

たとえば新商品を開発する上でも、外食のビッグデータは活用できます。時代ごとに食には“トレンド”があり、その傾向を飲食店はメニューに反映させているものです。その「ボリューム=消費者のニーズ」ですから、最新トレンドを知ることで、ヒット商品が生まれる確率も高まると考えています。

「塊肉」に注目が集まっていることをビッグデータから導き出し、新商品開発に利用した事例

また同時に「トレンド予報」という機能も搭載しており、「ぐるなび」独自のアルゴリズムによって、今後流行りそうなメニューを分析。その情報を提供しています。

「ぐるなびデータライブラリ」のデモ画面。特定のワードの「取り扱い店舗数」や「検索頻度」、さらには独自のアルゴリズムによって導き出した「トレンド予報」などの情報を得ることができる

――全国を網羅していることを考えると、商品開発だけでなく、チェーン店の新規出店のエリア選定など、営業戦略にも活用できそうですね。

はい。同じ東京でも、銀座と六本木、北千住では人気の飲料は異なります。同様に、他県においてもエリアごとに特徴があるものなんです。しかしそれを数値化することは、決して簡単なことではありません。

ですが「ぐるなびデータライブラリ」では、エリアごとに業態や客単価、メニューなど、さまざまな情報を有していますから、多種多様な情報を可視化することが可能です。その情報を元に、メーカーが店舗に営業すれば、ニーズに即した提案を実現することが可能になります。

そうした情報を持って営業に行けば、「こういうデータがあるので、これがおすすめです」と理論的におすすめすることができる。これは闇雲にすすめられるより、ずっと効果的ですし、すすめられる側も安心ですよね。

営業戦略事例:ビールメーカー様
エリアごとの店舗を分析し、戦略的な提案を実現した事例

――企業のプロモーション領域において、食のビッグデータが活用された事例はありますか?

はい。最近ですと、新商品のリリースに、「人気の○○」などというコピーをつけた場合、“それがどれくらい人気か”を示す根拠として使われています。やはりデータがあるかどうかで、説得力も変わってきますから、ニーズは高いです。

さまざまなデータと組み合わせ、さらに活用は広がる

――食の研究分野においても、御社のデータは活用できそうですね。

はい。先日、立命館大学(京都府)と産業連携協定を結び、地域の食材・食文化を伝えるためのデータベース化など、未来の食関連産業の発展を目指し、さまざまな研究を進めていきます。

大学側の持つ、人間工学やサービス工学の知見と、「ぐるなび」が保有するビッグデータがコラボレーションすることで、食関連産業を活性化できると考えていきます。

――商品開発やリリース、食の研究など、さまざまな分野で利用が進む「ぐるなびデータライブラリ」。グローバル展開も視野に入れていますか?

そうですね。2020年に向けて、日本はいま、世界からさまざまな面で注目を浴びています。それは食の分野も同様です。

インバウンド需要が増えるなかで、「海外の方が喜ぶ日本食のメニューや食材」を知りたいというニーズは今後さらに高まるでしょうし、日本食を海外に輸出する際にも、食のビッグデータが活躍すると考えています。

私たちは情報問屋であり、直接モノづくりをする立場にはありません。だからこそ、食に関わるすべての人たちを“情報”という形で今後も幅広くサポートしていきたいと考えています。

チェーン店ではIT化が進んでいる飲食店もありますが、個人店ではまだまだこれからです。だからこそ、飲食店の一次情報は貴重なビッグデータと言えます。

今後、アプリの個人データとの連携や、個々の消費データとの掛け合わせ、さらには異業種データとの組み合わせなどによって、食のビックデータを活用した新たなデータが生まれることでしょう。
 
AIによる味覚分析もスタートするなど、“嗜好性”という表現しにくいデータも分析が可能となってきています。多種多様なデータとクロスすることで、これまで想像もしていなかったような新たな商品やサービスが生まれるなど、そこには多くの可能性が秘められていそうです。

Written by:
BAE編集部