2018.09.27

オフライン翻訳機が解決する、高まるインバウンド対応ニーズ

IoT時代の現代、オフライン翻訳機「ili PRO」が注目される理由

観光庁によれば、今年上半期(1〜6月)の訪日外国人の数は1589.9万人。この数字は、上半期としては過去最多のものです。2020年に向けて、約3,000万人を超える外国人が日本を訪れることが予想されています。
 
そこでサービス業界全体で急務となっているのが、多言語対応です。現在も翻訳アプリなどが多くリリースされ、現場で活用されていますが、万全とは言えません。そのなかで、大きな注目を集めているのが、接客用オフライン翻訳機「ili PRO(イリー プロ)」です。
 
同製品の開発・販売を手掛ける、株式会社ログバー 代表取締役 CEO 吉田卓郎さんに「ネット不要の翻訳機がいま、現場で求められる理由や背景」などについて、お話を聞きました。

目次

使いやすさを重視し、あえて〝オフライン&一方通行〟を選択

吉田卓郎さん
株式会社ログバー 代表取締役 CEO 吉田卓郎さん

――「ili」はオフラインで動作する旅行者向けの翻訳機です。IoT時代に、あえて“ネット不要”にした理由を教えてください。

吉田

以前、弊社が開発した指輪型のウェアラブルデバイス「Ring」は、ジェスチャーコントロールとBluetoothの組み合わせによって、家電を操作したり、スマートフォンなどを操作できるデバイスでした。しかし通信環境が不安定な状態では上手く動かないことがあり、それがストレスに感じてしまうケースもありました。

そこで次回の製品(ili)は、環境に左右されないオフライン仕様にしようと決めていました。つまり“ネット不要”にした最大の理由は「ユーザーにとって、使いやすく、ストレスのない製品」を目指したかったからです。ちなみに、アプリにするという選択肢もありましたが、アプリは起動に時間がかかるため、翻訳機には適さないと判断しました。

翻訳機を使いたいときというのは、“突然訪れるもの”ですよね。「これ何て言うんだろう?」と思った次の瞬間に使えるのがベストです。「ili」は独立したガジェットですから、1秒で起動することが可能です。さらに軽くて旅行の邪魔にならない。ひとつの理想形だと考えました。

――「ili」はデザインもそうですが、使い勝手も機能もシンプルですよね。

吉田

はい。「誰でも簡単に使える翻訳機」にしたいと思ったんです。ボタンひとつで起動して、ボタンひとつで言語を切り替えることができる。あとは、ボタンを押しながら話せば、すぐに自動で翻訳されます。

こうしてシンプルかつ使いやすい構造にしたことで、現在「ili」は40〜80代のユーザーの方を中心に、非常に好意的な反応をいただいています。しかし従来、40代から80代の方は、新しいモノに抵抗感のある方が多い傾向にあります。その理由は、「使い方が難しく、覚えるのが面倒」だからです。その問題を「ili」はクリアしていることが、受け入られている要因だと考えています。
 
たとえば、海外旅行には「漠然とした不安」がつきまといますよね。実はその原因のほとんどは、“言語”にあります。その不安を解消したいと、40〜80代の方々は、「ili」をお守り代わりに購入されるケースも多いようです。

――“お守り代わり”ならば、余計に多機能であることを求められそうですが、シンプルな方がいいものなのでしょうか?

吉田

はい。ユーザーが旅行中に翻訳機を利用するのは、主に食事(飲食店)やショッピングにおいてです。そうした場面においては、一方通行である方が使いやすく、コミュニケーションも円滑に進むんです。

最初から一方通行だとわかっていれば、自然と質問する内容も「YESかNOで答えやすいもの」になるのですが、双方向だと思うと、人は長くて答えづらい質問をしてしまったりするんです。また、双方向だと機能が増える分、操作も複雑になってしまいます。つまり、ユーザビリティを重視した結果、あえて“一方通行”にしているんです。

吉田

その機能と操作性のシンプルさが受けて、アジアやヨーロッパ、アメリカでも「ili」は注目されています。なおiliユーザーは現在、10万人ほどで、8割は日本人で、2割は海外ユーザーです。

店舗におけるインバウンド対応の最大のニーズは“時短”

――そんな「ili」の、接客向けバージョン「ili PRO」が先日発表されました。接客に特化した理由は何ですか?

吉田

「ili」の発売直後から、「接客対応のものはないか?」という問い合わせが1万件以上もあったんです。それはつまり、昨今、訪日外国人観光客が急増し、現場でも対応を求められている証拠だと感じました。それだけニーズがあるのであれば作ろうということで「ili PRO」が生まれました。

事実、小売店だけでなく、病院などでは、訪日外国人の方は保険に加入していないケースも多いそうで、受付時に「保険加入の有無」など、複雑かつ専門的な内容を事前に確認する必要もあり、翻訳機へのニーズは高まっているそうです。

なお「ili PRO」は現在、英語・中国語・韓国語に対応しているのですが、この3言語に対応していれば、訪日外国人旅行者の9割以上は対応可能です。

――7月末まで「ili PRO」の無料体験モニターの募集をしていましたが、反響はいかがでしたか?

吉田

当初200社を予定していたのですが、実際の応募は400社を超えました。すでに利用した感想も届いているのですが、いちばん反応がよかったのは「ショートカット機能」でした。

「ili PRO」の導入理由というのは、訪日外国人対応の“時短”なんです。たとえば、必ず発生する「免税案内」などをショートカット機能で登録しておくことで、すぐに説明することが可能になります。

 
吉田

決して驚くような内容ではないですが、まさに「ili PRO」は、痒いところに手が届くガジェットなんです。「あったらいいな」を実現しているところが受けている理由だと思います。また「ili PRO」の導入前と導入後で、接客時間を測定したところ、導入前は平均10分だったものが、導入後は平均1分になったというデータもあります。確実に時短につながっている点が評価されていると感じてます。

それだけではありません。「ili PRO」を使って、商品をおすすめしたところ、売上が増加し、客単価も向上したというデータもあるんです。

「ili PRO」を利用したレコメンドは、さまざまな場面で効果を発揮する傾向にある。特に相性がいいのが「飲食店」
吉田

沖縄の空港も訪日外国人観光客の来店が多く、その対応策として「ili PRO」を導入しています。以前は、海外からのお客様に対しては、言語の問題もあり、なかなか話しかけづらかったそうですが、「ili PRO」導入後は、積極的に商品のレコメンドができると、ご好評をいただいています。実際、「これがおすすめです」「限定品です」と伝えるだけで、とても喜ばれるそうです。

私たちが海外旅行に行った際も、「お土産のお菓子を選ぶのに迷ってしまう」ことがあります。もし「どれがいいのかな?」と悩んでいるときに、自分の母国語で「これがおすすめです」と言われたら、すごく助かりますし、うれしいですよね。

同じものを持つことで生まれる仲間意識

――多言語による訪日外国人観光客の対応を実現する「ili PRO」。他にもさまざまな利用シーンがありそうですね。

吉田

はい。化粧品売り場では、「商品説明」に活躍しているという声が届いています。化粧品の説明は決して簡単ではありませんが、成分と特徴だけでも知りたい方は多くいます。そんなとき、「ili PRO」があれば、最低限の説明はこと足ります。同様に、飲食店では、海外のお客様にはベジタリアンの方もいますから、「何が入っているか」を聞かれるケースは多く、非常に役立っているそうです。

――語学が堪能なスタッフを配置すれば、問題の多くは解決できると思います。しかし、それが決して容易ではないからこそ、翻訳機のニーズが高まっているのでしょうね。

吉田

そうだと思います。私たちの想像以上に、現場のスタッフの方々は、日々増える訪日外国人観光客への対応に迫られています。1人ひとりの対応時間は短くても、その頻度が増えれば、負荷も増えます。つまり、いまやインバウンド対応は、さまざまな業界で大きな課題となっているんです。「ili PRO」がその解決の一助になれているのは、大変うれしいです。

――ちなみに、接客以外で「ili PRO」が活躍している場面もあるのでしょうか?

吉田

意外な効果という意味では、現在、東京中央郵便局で「ili PRO」を導入しているのですが、あるとき台湾人の方が訪れ、その方も偶然「ili」を持っていたそうなんです。するとその方は、職員が「ili」を首から下げていることに気付き、一緒に写真を撮って欲しいと、大変喜ばれたそうです。

その話を聞き、「ili」によって、新たな交流が生まれる可能性も感じました。

――たしかに「ili」シリーズは一方通行の翻訳機ですが、お互いに持っていれば、実は会話することも可能ですよね。

吉田

はい、そうなんです。「ili」は、首から下げられる仕様になっているので、お互いに掛けていれば、「コミュニケーションを取れる」証にもなります。同時にその瞬間、「同じものを持っている仲間意識」のようなものが生まれるのではないかと期待しています。

実はすでに、「iliに対応しています」というステッカーを作ってほしいという要望もあり、「iliの輪」の広がりを実感し始めています。

さらにその輪が広がり、「ili」によって、世界中の人たちが手軽にコミュニケーションを取れるような未来が実現できたら、とてもうれしいですね。

吉田卓郎さん

今後2020年に向け、さらに訪日外国人観光客は増加し、いま以上に「外国語の対応」を求められる場面・職種は増えていくはずです。あえて、一方通行のコミュニケ―ションとシンプルな機能にすることで双方のニーズを満たし、時短とコミュニケーションを可能にした翻訳機。さまざまな業界で広がり、店頭販促や接客対応など、様々な場面で活用され、インバウンドニーズに答えていけそうです。

Written by:
BAE編集部