2019.05.17

人気ミールキットに見る「罪悪感解消」の手法

料理をする満足感、家族と楽しむなどの付加価値

「家事代行」や「ベビーシッター」、共働き家庭などの手助けをするサービスが注目を集めています。これらのサービスの中で共通の課題となるのがユーザーの「罪悪感」をいかに払拭するかというところ。まだまだ家庭の仕事を他者に任せることに対して抵抗感があります。数年前より脚光を浴びているOisixのミールキット「Kit Oisix」も、“罪悪感の解消”や、“作る満足感”が商品に込められているようです。そのような商品コンセプトを、どのようにユーザーに届けているのか、オイシックス・ラ・大地株式会社、統合マーケティング本部 広報室 西田尚子さんにお話を伺いました。

目次

日常に潜む負の体験からニーズを見出す

——ミールキットは、ユーザーのどのようなニーズをとらえた商品だったのでしょうか。

Kit OisixはOisixのベースである、こだわり食材を使えるのはもちろん、料理研究家・プロが考案したレシピもあり、毎週20メニュー以上が提供されています

Oisixは、2000年に有機野菜や、無添加の加工食品を販売するネットスーパーとして創業しました。たくさんの方にご利用いただく反面、退会されるユーザーもいました。そうした方に、退会理由をヒアリングしたところ、料理に対する負の体験が生まれていることがわかったんです。

——「料理に対する負の体験」とは具体的にどのようなものでしょうか。

“いい物である、と認識して買っているはずの有機野菜を使いきれない”という罪悪感です。Oisixの会員の過半数は女性で、入会の多くのきっかけの多くはライフステージの変化です。結婚、妊娠、出産などのタイミングですね。だから「家族ために、いいものを食卓に並べたい」という意識を持っている方が多い。とはいえ、多忙の毎日の中でOisioxで野菜を買っても、使いきれないこともあります。年齢で言うと、30代〜40代中心です。Oisixで野菜を買っても、使いきれない。毎日料理ができない。だから退会します……という流れでした。

西田尚子さん
オイシックス・ラ・大地株式会社、統合マーケティング本部 広報室 西田尚子さん

商品を通じた家族のコミュニケーション促進も罪悪感解消に

——そういった料理に対する負の体験を解消するアプローチとして、商品開発に至ったのでしょうか。

それもありますが、もう一つは罪悪感の解消です。共働きは大変だから仕方ないけれど、Kit Oisixを発売した2013年当時は忙しい時の食事はスーパーなどで購入する出来合いのお惣菜・冷凍食品・外食ぐらいしか選択肢がありませんでした。家族に手作りのもの料理を作ってあげたいという方にとっては、添加物も気になるし、コストもかかるし、何より罪悪感の払拭には遠い。そこから「ミールキット」の発想が生まれました。
Kit Oisixは、工作キットのようにワンパッケージになっているので、帰宅してから20分で2品作れます。野菜も必要分が小分けになっていますから、余りが出ません。

Kit Oisixを利用されているメインの層は、年齢で言うと30代~40代中心です。この世代が育った環境は、母親が専業主婦というケースが多い。当時のお母さんたちは、毎日家にいて、家族や子どものために料理を作ってくれていました。だからこそ、自分が母親になった時、たとえ共働きで時間がなくても「ちゃんと作らなくては」「母のようにしなくては」という意識が働いてしまう。その意識が罪悪感を生み、負の体験につながっていたのかもしれません。

——20分という時間にはどのような狙いがあるのでしょうか。

Kit Oisixを立ち上げた際、必要としていたのは、負の体験の解消だけでなく「料理をしていると実感してもらうこと」でした。簡単でも、料理をした実感がなければ罪悪感はなくなりません。例えば、包丁を使う回数を調整したり、一手間の作業を加えたり。試行錯誤した結果、適度な料理時間も20分という数字が導き出されました。現在は、毎食Kit Oisixを使うというよりは、週に数回、どうしても時間がない時に使う、という方が多いようです。

——実際に“罪悪感の解消”や“作る満足感”という商品の魅力をユーザーに感じてもらうために、どのようなことをされていますか。

例えば、パッケージなどに改善を加えています。最初は中身の見えない箱に入れてお届けしていましたが、当時はミールキットが現在ほど認知されていなかったので、「どういうものか分からなくて不安」というお声をいただきました。中身が見えるクリアバッグのタイプに変え、何が作れるのかメニューも外から見えるようにしました。届いたあと、そのまま冷蔵庫に入れることを考えても中身が見えるほうが安心です。
また、レシピカードの作り方にも一工夫していて、料理本のように工程と写真を別々に載せるのではなく、一緒に載せることでみやすく、分かりやすくしています。

レシピカードの作り方にもひと工夫。手軽でも料理をした実感があるのが6工程なんだとか

——そのほか、ユーザーからの要望やニーズに合わせて実施したことはありますか?

例えば、「お子様も食べやすいメニューを増やして欲しい」というお声を受けて、お子様も食べやすい味付けで、お子様がお手伝いできるポイントを掲載したキッズメニューというシリーズを展開しています。

キッズメニューでは、お子さんが手伝えるポイントを作り、レシピカードに吹き出しで掲載しています。対象は4歳から5歳のお子様で、包丁を使わず、ちぎったり、盛り付けるようなイメージです。自発的に料理するきっかけにもなったら幸いです。

お子様と一緒に作るメニューは、家族のコミュニケーション促進や、食育、共働き夫婦の助け合い、などにつながっていそうです

——より対外的な仕掛けではどのようなことを実施されていますか。

今年の3月に「献立に悩まない生活」というテーマでCMを放送しました。また、InstagramやTwitterといったSNSも活用しています。投稿キャンペーンを実施したり、過去にはインスラグラマーと商品開発を行ったこともあります。ありがたいことに、Kit Oisixはたくさんの方がSNSに投稿してくださっています。

見栄えよくなるように、彩りを考えて考案をしていることは、投稿につながっている要因の一つではないかと思います。例えば、彩りのためのパセリをたくさん買うにはためらいがありますが、Kit Oisixには必要な分だけ少量が用意されている。結果、写真も綺麗に写る。「見栄えよく作れる」から、投稿につながりやすいのではないかと思います。


単に「家事がラクになる」というメッセージだけでは、生活者たちに“罪悪感”を抱かせてしまい、なかなか購入へと結びつきないはずです。“子どもと一緒に作る”というキットならではの「食育要素」をプラスするとことで、罪悪感はさらに解消されているようにも感じました。
また、Kit Oisixに関するSNSの投稿が多いのは、作ったものを投稿してみたいという人間の心理もありそうです。材料が一定でスタートが同じなため、間違っていたらどうしよう、恥ずかしいと、いう気持ちが起きにくい。料理だけでなく、ハンドメイトや、プラモデルなど、「作ってみる」一手間がある商品は、拡散してもらいやすいのかもしれません。
家事代行のニーズが高まりを見せる中で、ユーザーにストレスなくサービスを利用してもらうためのヒントがここには隠されていそうです。

Written by:
BAE編集部