2021.03.12

オンライン展覧会におけるコンテンツの活用法とは

「家庭教師ヒットマンREBORN! オンライン展覧会~リユニオーネ(同窓会)~」事例紹介

長引く新型コロナウイルス感染症拡大により、特にエンタメや観光業・イベント・商業施設など「現地に足を運んでもらう」ことが必要なビジネスは大きな影響を受けているため、企業はオンライン施策に力を入れています。
様々なオンラインを活用した企画やサービスが登場していますが、オンライン上で選ばれる存在になるためには「コンテンツ」を活用することもポイントのひとつです。
昨年12月にスタートした「家庭教師ヒットマンREBORN!オンライン展覧会~リユニオーネ(同窓会)~」の事例を基に、オンライン上でのWebコンテンツのあり方とその可能性について、企画のプラットフォームを手掛けるAnique株式会社 中村太一さんと、企画プロデュース及び監修を担当した電通テックの磯和道嗣、塩谷まゆ子が対談しました。

目次

オンラインならではのコミニュケーション設計

——家庭教師ヒットマンREBORN!のオンライン展覧会について教えてください。

磯和

電通テックは、家庭教師ヒットマンREBORN!(略称REBORN!)の商品化窓⼝として作品をお預かりする⽴場にいます。これまではリアルな催事や店舗での展⽰や物販が常識でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響でリアルな展開がやりにくくなり、オンラインでの展開にも活路を広げる機会を探っていたところ、Aniqueさんからお声がけをいただきました。

中村

そうですね。弊社が、オンライン展覧会のプラットフォーム及び特設サイト製作と運営を行い、版権管理から作画作業、監修プロデュースなどを電通テックさんにご協力いただきました。

オンライン展覧会は、新型コロナウイルス感染症の影響でリアルな展覧会や企画展がやりにくいという企業のニーズから企画しました。REBORN!は、2004年に週刊少年ジャンプで連載が開始された後にアニメ化され、2010年に放送が終了している作品ですが、いまだに商品化も盛んで多くのファンの方に長く愛されている作品です。なので、このREBORN!のコンテンツを活用して、オンライン展覧会を実施したいと思いました。

(C)天野明/集英社・テレビ東京・リボーン製作委員会
【家庭教師ヒットマンREBORN!オンライン展覧会~リユニオーネ(同窓会)~】

——オンライン展覧会​のメリットをどう感じていますか。

中村

まず空間の規模にとらわれることなく、多くの作品を展示できることがメリットですね。ファンの方々が喜ぶREBORN!の名場面を網羅して展示することが可能です。300作品を超える展示物には全てに原作者監修のキャプションも添えられています。展覧会のテーマも”同窓会”というファンからするとグッとくる表現で、当時の思い出に浸りながら鑑賞いただけるように考えました。

ただ、作品そのものの鑑賞体験としては、やはりアルな展覧会のほうが良いでしょう。僕たちはその想いを否定するつもりはありません。だからこそ、リアルの展覧会をそのままオンラインに置き換えるということはせず、オンラインだからこそ楽しめる機能を盛り込みました。

塩谷

そうですね。オンラインにすることで「展覧会に行きたいのに時間が合わない」「開催場所が遠くて参加できない」方にも来場のチャンスを拡大することができますよね。

——オンラインだからできることなど、工夫した点はなんでしょうか。

中村

そのひとつが、展示物ごとに、自分のコメントを投稿できる機能です。リアルな展覧会では、横で鑑賞している人がその作品についてどう感じているかわからないですよね。でもこのオンライン展覧会では、コメントという形で可視化することで、同じ作品を好きな人同士が気持ちを共有しあって、より作品に対して感情移入できる機会を作っています。

中村

もちろん24時間スタッフが検閲をおこなって、不適切なコメントの投稿もチェックしていますが、今回のコメントの99.9%はポジティブな内容でした。やはり愛のあるコメントが多く集まる場所では、正のループが起きるんだなと。ファンの方々が一体となったオンラインだからこそできる展覧会を象徴していると思います。

他にも友人同士で通話しながら展示物を楽しめる同時通話機能もあります。普通の展覧会では、会話は禁止ですが、この展覧会では作品を好きな友人同士で思う存分大声で語り合っていただくことが可能となっています。 こういう点もオンラインの良さですよね。また、普通の展覧会では仕事終わりの平日の夜は参加することができず、休日は他のお客さまが多すぎて満足に鑑賞できないということも多いかと思うのですが、オンライン展覧会であれば、24時間楽しむことができて、ずっと見ていたい絵を心ゆくまで楽しむことも可能です。

そして最後の特徴はミュージアムショップです。Aniqueのオンライン展覧会の物販ブースは、外部のECサイトに遷移させることなく、その場で購入いただける機能を実装しています。

塩谷

オンライン展覧会の場合「対面でない分、来場者に作品についてどう感じているか分からないのでは?」と懸念している企業様も多いと思います。REBORN!展覧会では、音声通話を使ってリアルに友達同士で盛り上がることもできるため、コメント投稿を読んだユーザーが、さらにコメントを投稿することでコミュニティとして機能し、リピーターを増やすことができたのではないかと思います。

——リアルではできないオンラインならではの仕掛けですね。参加者の反響はいかがでしたか?

中村

公開当日にTwitterでトレンド入りするなど、大きな反響がありました。Twitterの公式アカウントが開設されてから最大のRT数やインプレッション数をあげている点でも、ファンの皆様に注目して楽しんでいただけているのかなと思います。特にファン層は当時アニメを見ていた20代の方々が大半なのもあり、情報の拡散スピードが早かったですね。

塩谷

すごい熱量のコメントが多かったですよね。特にファン層は当時アニメを見ていた20代の方々が大半なのもあり、情報の拡散スピードが早かったですね。SNSを上手く活用できたのではないかと思います。

——コンテンツを使ったオンライン展覧会の注意点やノウハウはどんなところだと思いますか?

中村

長期的に来場してもらえるギミックを作ることが重要だと思います。期間中に「名場面総選挙」として、投票で選ばれた名場面が新たに展覧会の部屋として追加されるファン一体となったイベントなどを実施しました。展覧会の部屋を自由にカスタマイズできるのもオンラインならではです。
また、物販においてはしっかり商品の魅力を伝えるための工夫をすること、例えば動画や3Dなどを用いてリアリティのある物販ブースを演出することが売り上げに繋がる秘訣だと思います。オンラインではありましたが、物販の売上は人気のリアル店舗(一等地)等で実施するフェアの売上を大きく超える結果となりました。

塩谷

コンテンツを使ったオンライン展覧会は増えてきたように感じます。
REBORN!展覧会の来場者数や物販の売り上げをみても、予想を上回る成果につなげることができたのは、オンライン展覧会という空間全体がファンとの一体感を創り上げることができたからだと思います。

このようなコンテンツを活用する場合の注意点ですが、一番大切なのは、著作権の管理だと思います。作品のイメージを脅かす行為を防ぐため、事前に禁止事項を詳細に明示しておくことがポイントです。展示物のスクリーンショットをデータとして保存することを禁止し、Twitterアカウントで掲載している方がいた場合には、削除依頼をして取り下げてもらったりもしました。
ニーズが急速に高まっている分、著作権管理をしっかりと行いつつ、常に新しい視点とそのコンテンツに合った企画を生み出し続けることが、これから重要な点になりそうですね。

コンテンツとファンのエンゲージメントを高める
 

——オンライン上でのコンテンツの楽しみは今後どのようになっていくと思いますか。

中村

日本のコンテンツを海外に向けて展開していくサービスが種類も量も増えていくことを願っています。ゲームは凄く先行していて、世界中の人々が同じタイトルをマルチプレイで楽しむことが当たり前になっていますが、ゲーム以外のサービスがもっと増えても面白いんじゃないかと思います。
特にアニメや漫画は、昔は海外ではコアなファンだけが楽しんでいるものでしたが、今はNetflixやAmazon Prime Videoのような動画配信サイトのおかげで、日本のコンテンツのライトファンは凄く増えている状況だと思います。

塩谷

Netflixに友達とオンラインで一緒に見ながらチャットをすることができる「Netflix Party」という拡張機能が注目を集めていましたね。映像を見ながら、文字によるコミュニケーションをとるというのもオンラインならではの体験ですね。コロナが終息しても、新しい動画鑑賞として広まっていくのではないでしょうか。

——今後の展望を教えてください。

中村

作品が大好きな気持ちは国境を超えます。作品を愛する世界中の人同士で盛り上がりながら作品を楽しめるサービスの提供や、コンテンツホルダーの皆さまがファンの方々に喜んでもらう機会作りに、しっかりと取り組みたいと考えています。

楽しんでもらうためのアイデアはたくさんあります。例えば、キャラクターを演じた声優さんと一緒に回れるオンライン展覧会。アートを見ながら、声優さんが耳元で解説してくれたら嬉しいですよね。その作品が好きなインフルエンサーやVTuberの方々と一緒に展覧会をまわって配信していくというのにもトライしてみたいですし、あわせて鑑賞体験にとどまらないゲーム的な要素をいれていく企画もあります。
興味を持っていただけるコンテンツホルダーの方がいらっしゃれば、是非お声がけいただけると嬉しいです。

磯和

このようなプラットフォームの活用は、アニメに限らず、漫画、キャラクター、小説など、多岐にわたると思います。作品と、制作者、ファンとファン同士とがオンラインでつながるコミュニティの場を提供できることで、コンテンツとファンのエンゲージメントをより一層高めることができます。コンテンツホルダーの方には、オンラインでの利用料やECによる新たな収益をもたらし、クライアント企業の方には様々なマーケティング活動の中で活用することができると思います。

また従来からのフィジカルなグッズの販売に加え、オンラインならではの特性をいかして、まさにオンラインで展示している作品をデジタルアート(商品)として、ブロックチェーンと絡めて商品化(販売)していくことも可能になります。これにより購入された商品の購入者によるデジタル上での所有権の譲渡や二次売買(流通)も可能となり、都度支払われる手数料の一部をクリエイターに還元することも可能になる等、これまで想像もしていなかった市場の創出も期待できるでしょう。

電通テックとしては、REBORN!をはじめとした様々なコンテンツホルダーの皆様と数多く協業させていただく中で、オフラインからオンラインまでをトータルでプロデュースできることを強みとしています。これらの仕組みやソリューションを通じて、更なるコンテンツビジネスのDXを推進し、皆様のお役に立っていければと思っています。​

中村太一

Anique株式会社 代表取締役

2006年、博報堂DYメディアパートナーズに⼊社し、TV・雑誌・WEB・コンテンツ・マーケティング・新規事業⽴ち上げを経験。主な仕事に、「実写巨⼈初登場CF」 「実物⼤巨⼈プロジェクションマッピング」「名探偵コナン×Yahoo! JAPAN『仕掛けられた爆弾事件』」「SEKAI NO OWARI×リアル脱出ゲーム『INSOMNIA TRAINからの脱出』」。
2019年、Anique株式会社を設⽴し、コンテンツ×ブロックチェーンを組み合わせた新サービスAniqueをリリース。
素晴らしい創作物をファンがオンラインで楽しめる「オンライン展覧会」もスタート。

磯和道嗣

株式会社 電通テック
コンテンツビジネス室 チーフコンテンツビジネスプロデューサー

国内外のキャラクター・アニメの映像化及び商品化・広告販促利⽤等の⼆次利⽤や、事業開発から制作、タイアップ、ライセンス、マーチャンダイジング等のマネタイズに⾄るまでを⼿掛ける。グローバルでのメディアコンテンツ業務にも従事。コンテンツ×テクノロジーでブランドとファンのエンゲージメントを⾼める。アジアライセンシングアワード審査員。

塩谷まゆ子

株式会社 電通テック
コンテンツビジネス室 ライセンシング・プロデューサー

「アニメ・キャラクター」のライセンス・版権を活⽤したキャスティング・タイアップサービスの提供や「家庭教師ヒットマンREBORN!」の商品化窓⼝として様々な監修業務に携わる。 

Written by:
BAE編集部