2019.04.24

SNS時代の音を活用したマーケティングとは

期待されるZ世代へのアプローチ効果

スマートフォンやスマートスピーカーといったデジタルデバイスの普及・進化によって、私たちが“音”と接する機会はますます多様化しています。音をめぐる人々の環境が変化しているいまだからこそ、「音によるマーケティング手法」も再び注目されはじめています。音を主軸としたマーケティングの今後の可能性について、株式会社トライバルメディアハウスの高野修平氏にお話を伺いました。

目次

5Gで拡大する音とのコンタクトポイント

——音を活用したマーケティングとは、どのような手法なのでしょうか。

聴覚へのアプローチを戦略や戦術に落とし込むマーケティングのことです。テレビCMやサウンドロゴに代表されるような“音”を活用したマーケティング手法は以前から存在していました。例えば、パソコンの起動音でメーカーの名前が頭に浮かんだり、CMから流れてくる音楽を耳にすることで京都のことが思い浮かんだりといった体験は、誰にも覚えがあるかと思います。そうやって音を絡めることで、ユーザーに強い印象を残すことが出来るのです。

——音を活用したマーケティングが人を動かすと言われるのはなぜでしょうか。

人間は、耳にした音に反応し、感情を動かされる事が多い生き物です。数万年前から、ヒトは音を言語とは別のものとして認識する能力があったと言われています。今日でも、踏切の音や救急車のサイレンなど、音に反応し、その音によって感情や行動が促されるときがあるかと思います。

また、音楽が購買行動に影響を与えているということを証明する有名な実験があります。スーパーマーケットなどでテンポの遅い音楽を流すと、売上が上がるというものです。これは、音楽のテンポに合わせて自然と来店客の歩みも遅くなり、回遊時間が長くなることが理由だと言われています。
私たちは、そういった音が人に与える影響・行動をもっとマーケティング活動にも活かしていきたいと考えています。

さらに、今後はもっと場所や形態など音に触れる機会が多様化していくはずです。インターネット上はもちろん、店舗やイベントなどの空間、プロダクトに意図的に組み込まれた音(起動音や操作音)が、多くのコンタクトポイントで生活者に影響を及ぼすようになるのではないでしょうか

高野修平氏
高野氏は社内でエンターテインメントマーケティングレーベル「Modern Age/モダンエイジ」という部署を立ち上げ、聴覚を利用した商品・ブランドの認知、ブランドイメージ醸成、マインドシェアの向上に取り組んでいます

——なぜ、いま“音”に注目されているのでしょうか。

この情報爆発時代においては、どの企業も生活者に情報を届けにくいと感じているはずです。一方、生活者も毎日大量の情報を浴びているわけですから、記憶に残っているものはほとんどないでしょう。
そんな状況下だからこそ、企業はこれまで以上に「記憶に刻まれる(第一想起される)ブランドになる」ことを求めています。それを叶える手段の一つが、この“音”だと考えているのです。

最近ではアーティストが公式YouTubeを使ってMVだけではなく楽曲を配信していますし、ユーザーが”動画の音を聴く”事に慣れてきました。また、スマートスピーカーが話題を呼び、Spotify等のオーディオプラットフォーマーも台頭。作業をしつつ”ながら聴き”をする人も増えました。このように、音を使ったアプローチに適した環境も整ってきているのです。今後スマートスピーカーの普及が進んで生活者による音声指示・検索が一般化すれば、企業側も音声を軸としたマーケティングへの取り組みが考えられますよね。5Gといった通信環境で高精細でリッチなコンテンツの配信が可能になるなども、動画・音楽配信サービスも一層の普及・進化が予想されます。そのときにはもう、生活者とのコンタクトポイントの全てが“音”を活用したマーケティングの戦場になっているはずです。

特にZ世代のアプローチに効く、音を活用したマーケティング

——音を活用したマーケティングが特に世代によって向き不向きはあるのでしょうか?

全世代に対して効果的ではありますが、その中でも多くの企業がマーケティングに苦戦していると言われている1995年以降生まれの「Z世代」へのアプローチはとりわけ有効だと考えています。

一般社団法人日本レコード協会が実施している「2017年度 音楽メディアユーザー実態調査」でも、「音楽との関わり方は?」という質問に対して、Z世代は音楽の聴取率がその他の世代に比べて高いという結果が出ています。

昨年弊社がZ世代を含む10~30代に行った調査で、趣味は音楽と答えた10代も約70%いるうえ、半数以上が1日のうち30分以上2時間未満あるいは2時間以上4時間未満音楽を聴くと答えています。

好きな趣味ジャンル
好きな趣味ジャンル

また、「空き時間に何をしているか」という質問に対して、Z世代を内包する10~20代の約50%がソーシャルメディアの投稿や閲覧をすると答えているなど、オンライン上での行動が大半を占めています。暇なときは、YouTubeやTwitter、InstagramなどのSNSで動画を見ていることが多いようです。
さらに、オンライン・オフライン問わず「音楽を聴く」と答えた人が30代に比べて圧倒的に多く、動画や音楽に多くの空き時間を費やしています。

10~30代の空き時間の使い方
10~30代の空き時間の使い方

今までのコミュニケーションと言えば、メールなど音のないものでしたが、いまではTwitterやインスタグラムなどが浸透し、音を使ったコミュニケーションができるようになりました。SNSや動画サイトを通じて音に触れる機会も多いことから、ブランディングなどにうまく活用することができると考えています。

ソーシャルメディア閲覧頻度 世代別
ソーシャルメディア閲覧頻度 世代別
10~30代が音楽を聴く時間
10~30代が音楽を聴く時間

---
■調査概要
調査方法:インターネットリサーチ
調査日程:2018/9/28~10/24
調査対象:10~30代男女 約2,200人
トライバルメディアハウス調べ
---

——SNSでの音を活用したマーケティングには、どんな事例があるでしょうか。

実際に企業が伝えたいメッセージを、音を使ってターゲットへ訴求した事例があります。その企業が展開する革新的なサービスの認知度はとても高かったのですが、主体となるその企業自身が知られていないという課題がありました。そこで楽曲を使ったブランドビジョンを展開しました。
企業の目指す世界観に沿ったキーワードを掲げ、そのメッセージとの親和性が高いアーティストを集め、「挑戦」というテーマでMVを発表。これにより、”巨大企業でありながら、ベンチャー精神がある”というイメージを印象づけました。このプロジェクトは、Twitter、YouTubeやインターネットの特設サイト、音楽Webメディアとのタイアップなど、オンラインを中心に拡散されました。

プラットフォーム、アーティストなど、文脈を読み取ることが大事

——音をマーケティングに取り入れたいと思った時、どのような点に気をつければ良いのでしょうか。

まず、ブランドが何のために音を使うのか「認知獲得」・「好意度向上」・「コンバージョン」のどこをゴールにするのかをしっかり定めたうえで取り組んでいく必要があります。
また、Z世代は必ずしも不特定多数と繋がりたいわけではなく、趣味やコミュニティーの越境に消極的です。Twitterでは趣味ごとにアカウントを開設し、それぞれ拡散を目的とした配信をし、Instagramではアカウントに鍵をつけ、リアルな交友関係を深め、閉ざされたコミュニティーで配信をする傾向にあるなど、SNSを使い分けています。

いま人気のプラットフォーム「TikTok」で成功した事例をみてみます。TikTokはアプリ内にある楽曲を使って誰でも簡単に動画の撮影・編集ができるソーシャルメディアです。気軽にカッコイイ・カワイイ・面白い15秒動画を作れることで、Z世代を中心に人気を集めています。
あるチョコレート菓子の企業が若者に向けたプロモーションでは、若者に人気のクリエーティブアーティストによるオリジナル曲を制作、それに合わせてダンスをユーザーに踊ってもらう施策を実施しました。その結果、軽快でかわいく、覚えやすいダンスはインフルエンサーを中心に若いユーザーに一気に拡散されました。これもSNSが持つ特性やユーザーのツボを理解した上で設計されたことが成功要因と言えるでしょう。

——今後、音と企業の関係はどのようになっていくと考えていますか。

“音”を、ブランド戦略の一つとして活用することで、生活者の記憶に刻むブランドとなる手助けができると思います。これまでの視覚を中心としたコミュニケーションだけでなく、“音”を活用した聴覚に訴えるコミュニケーションにもっと光があたることで、ブランドにも生活者にとっても幸せな関係が生まれてくるのではないかと考えています。


人々のライフスタイルが多様化し、情報の受け取り方も変化する中、かつてのようにテレビやラジオで印象的な音楽やフレーズを繰り返すだけでは、メッセージが受け取られにくい時代になってきます。
一方で、SNSや動画サイトなど、特にZ世代と呼ばれるような若い世代が音楽に触れる環境は多様化しつつも、依然として彼らの生活に「音楽」が身近で重要な存在であることは変わりません。
とはいえ、彼らへ向けたアプローチには「文脈」が求められます。意味もなくビッグネームのアーティストや、トレンドのプラットフォームを採用するのではなく、常にコンセプトや文脈を意識して設計していくことが成功の鍵となるでしょう。

Written by:
BAE編集部