2021.07.20

観光DXを支援するデジタルツアーアプリ。地域の環境整備とサステナブルなガイドを支援

プラットフォーム化でロケーションテックを無限に活用

基幹産業として地域の創生を支える観光。来訪客の誘致や満足度向上はもちろん、最近では密にならない、安心して楽しめる施策等が求められています。
課題解決法として注目される仕組みの一つが、アプリを使ったデジタルな観光ツアーです。自治体や観光関連企業にとってのメリットや、アプリを通じた観光DX、サステナビリティの可能性について、無料での利用・展開が可能な観光アプリ「SpotTour(スポットツアー)」の鳥居さんにお話を伺います。

目次

ツアー案内からコンテンツの提供までアプリで一元化

——ユーザーもツアーの提供者側も無料で利用できる観光アプリ「SpotTour」。どのような仕組みなのでしょうか。

自治体や事業者が、おすすめの観光スポットを紹介するツアーを作成。アプリ上で提案したコースに沿って、ユーザーに地域を巡ってもらう仕組みです。
魅力的なスポットの紹介はもちろん、デジタルスタンプのコレクション、景品の応募フォームの設定、フォトブックの作成なども可能で、観光地への来訪のきっかけや動機を生み出します。

位置情報テクノロジーを用いて、ツアー参加者の移動ルートやスポットへの滞在時間といった周遊状況を知ることができるのがポイントです。
ツアーそのものの効果検証ができるのはもちろん、分析したデータを地域の観光整備やMaaSに繋げるなど、観光のDXに役立てることができます。自治体や企業など、法人であれば無料で活用が可能です。

コースやスポット、案内文、写真、リンクなどを、ツアーの作成者側が設定。自在に増減できる。12の言語への自動翻訳も対応。ツアーの有料化なども可能

「観光情報を提供する」「ルートを記録できる」など、スタンドアローン型の観光系アプリは多数存在しますが、このアプリはルート案内から、観光コンテンツの提供、記録までを一元化したプラットフォームであることがポイントです。
アプリで誰でも参加できるためユーザーの年齢層は幅広く、SNS、チラシ、ポスター、メディア連携など流入のきっかけも様々です。

——どんな自治体や事業者がツアーを展開しているのですか。

全国の自治体、JR東日本、東京メトロ、西日本鉄道、日本郵便、トヨタグループ、アクティブシニア向けのメディア「はいから」など、70以上の団体がツアーを提供しています。
エンタメ施設や文化施設の内部を中心に組まれたツアーもあります。ただ、個人でのツアー作成はできません。

王道の観光コースや絶景コースから、文化や歴史を巡る旅、健康ウォークラリーなどのテーマを設けたコース、裏路地を行くニッチなコースなど多彩で、かかる時間や距離も様々

どんなアイデアのツアーも無料で配信。観光の効果検証が可能に

——「SpotTour」を活用する自治体や事業者は、どんな目的や課題を抱えているのでしょうか。

「たくさんの観光客に楽しんでもらい、地域を元気にしたい」という目標は当然、皆さんに共通しています。しかし、同時にシステムを活用するとなると、どこも予算に関するシビアな課題を抱えていることが少なくありません。

「土地の魅力をアピールしたい」という熱意はあっても、土地自体がマイナーだったり、知識やノウハウに乏しかったり、ツアーや観光のアイデアは豊富でも、施策を展開する予算がなかったり。運よく予算がついてシステムを開発できても、人気が出る保証はなく、2年目、3年目に息切れしてしまうことも多いのです。

それに、パンフレットやサイトを作成しても、内容が有名な観光地に偏り、似たような情報があふれてしまうといったケースが起こりがちで、出かける動機付けとしてはどうしても弱い――といった問題もあります。

「SpotTour」は、コストをかけずにツアーの企画をいくつでも自由に提案できますし、提案してみて人気が出なくても、すぐ他のツアーが作れます。複数のトライを続け、データ活用によってPDCAを回すことが可能になり、課題解決に繋げられる、というわけです。

——どのようなツアーが、観光地の魅力の発信に貢献しているのでしょうか。事例を教えてください。

例えば、熊本市の日本郵便や山口市の観光コンベンション協会のツアーなどは、ユニークな試みの一つです。郵便局員や山口大学の学生の発案などを取り入れて、本当におすすめしたいスポットや特産品が有名無名を問わず紹介されており、地元のリアルな様子や雰囲気が伝わるツアーになっています。

名所旧跡、レジャー・文化施設等に加えて、「マンガのキャラクター像」「商店街の中にかかる橋」「地域の人に愛される店」「レトロな温泉」などニッチなスポットも話題に

実際に周遊する様子をレポートする動画を用意して、アプリ内からリンクしているツアーもあります。動画を活用することで、写真やテキストではわかりにくい内容を伝えることなどに役立っているようです。

スタンプラリーと相性のよい鉄道関連の事例も、注目度が高いようです。鉄道や駅だけでなく、バスや徒歩で向かうスポットやルートも含めて紹介するツアーも多く、鉄道ファンはもちろん、沿線の魅力的なスポットを知りたいというニーズに応える、満足度の高い内容になっています。

鉄道スタンプのデザインを再現し、集めたくなる仕掛けに。スポットの設定によって、駅ナカにも周辺にも興味を持ってもらえる

地域の人が本当におすすめしたい細かな情報などを反映できること、行政による観光施策を中心としたツアーだけではなく、施設ごと、テーマごと、季節ごと、ジャンル別、ターゲット別、目的別、コスト別、など、様々な視点からツアーを企画できることがポイントになっています。

通常の観光ツアーの設計や安全対策にも位置情報が生きる

——位置情報によって獲得できる、データの活用法について教えてください。

例えば、滞在時間、移動時間、移動経路のデータを分析することで、移動に手間取る場所にはバスの路線を整備したり、休憩所を増設したりと、ユーザーの利便性や満足度の向上に繋がる観光整備のための、具体的な対応策が立てられます。
「スポットを変えたら立ち寄る店が増えた」「案外ニッチなポイントの人気が高かった」「動きが少なかったが秋には参加者が増えた」といった検証結果があれば、施策の合理性やヒットの確立が高まるでしょう。

リアルツアーやイベントの開催を企画したい、旅行会社によるツアーを誘致したい、メディアと連携したい、といった場合にも、「SpotTour」によるテストマーケティングやシミュレーションが有効です。データや根拠に基づく、説得力の高い売り込み方や交渉が可能になるでしょう。

スタート地点や訪問経路、地域全体やスポットへの滞在時間のデータ分析が可能。ユーザーの属性等は獲得していないが、IDから複数のツアーへの参加状況などもわかる

例えば、スタンプラリーの景品の応募をWebフォームにすることでユーザ属性を取得し、ファーストパーティーデータと組み合わせることで、ファンコミュニティの形成に結びつけるなど、ユーザーとのコミュニケーションを深める施策としての展開も可能だと思います。
その際、その場所に訪問したユーザーを限定としたメモリアルグッズなどの販売に繋げれば、旅アトにも楽しんでもらうことができるでしょう。

将来的には、移動のビッグデータ化や、現地のリアルタイムなデータ等との連動によって、ツアー提供者側と参加者の両方のメリットに通じるデータ活用を拡大していきたいと思います。

——ニューノーマル時代においては、ツアーやイベントの安全性を確実にするという課題もあります。この点にも位置情報が活用できるそうですね。

はい。オーバーツーリズムを回避することや景観の維持のために、ツアー参加者にマナーの喚起もできます。使い方によって、予期せぬ災害やイベント情報の配信なども可能です。 保険会社と協業して、アプリ内から少額保険に加入できるサービスも提供しています。従来の少額保険と比べて、位置情報により旅ナカでも加入できることが特徴です。

そもそも、「SpotTour」はユーザーが好きな日時に、一人でもツアーをスタートできるため、混雑などを生みにくい仕掛けでもあります。

——今後の目標などを教えてください。観光アプリは、観光の課題にどのように貢献していけるでしょうか。

有料ツアーの実施や広告掲載、投げ銭などの寄付を可能にするなど、観光地のマネタイズに繋げていきたいと考えています。

また、観光のDXにより得られたビッグデータや分析機能の提供を進めます。地域の経済に貢献し、環境や人々の安全に配慮した、持続可能な観光に貢献できる仕組みとして、より成長していきたいと思います。ぜひ、一過性の取り組みではなく、ロングテールの戦略を意識しながら、継続的な運用に取り組んでみてください。

スポットツアー株式会社 代表取締役 鳥居 暁(とりい・あかつき)さん

プラットフォームの提供によって、コスト削減とPDCAを実現する観光アプリ。データの獲得への期待も高く、今後も様々な自治体や企業による、MaaSや地域整備への利活用が進むでしょう。

観光関連以外の企業や団体によるツアーの作成も可能で、地域の魅力を様々な視点で伝えられることもポイントです。関連して、雇用を生む可能性などもあり、地域に広く貢献するサスティナブルな取り組みとしても期待が持てます。
また、PRと連動して、コンテンツのロケ地といった“聖地巡礼”ツアーの展開や、ツアーに関連するプレミアム情報の提供や・グッズ販売などにも繋げられそうです。

Written by:
BAE編集部