2020.03.24

人気のペットテック。家族の一員である愛犬・愛猫を守るプロダクトが市場拡大の鍵に

IoTやAIによる見守りやケアでペットとの暮らしが変わる

ペットとの生活やコミュニケーションをより安全で豊かにする「ペットテック(ペット×テクノロジー)」。国内でも見守りカメラやヘルスケア製品などの好評を受けて、市場が拡大しています。 現在、国内のペットテックはどのような段階にあり、今後はどのように発展していくものと見られているのでしょうか。愛犬の見守りカメラの販売を手掛けるTomofun(トモファン)株式会社の布施さんにお話を伺いました。

目次

国内のペットビジネスの総市場は約1兆5,700億円に

——そもそも「ペットテック」とはどう定義されているのでしょうか。また、どんなアイテムやサービスがあるのでしょうか。

ペットテックとは、主に犬猫を対象に展開されるペットフードやペット用の生活用品、トイレタリーなどのレガシーなペット商材に、ITを掛け合わせて生み出されたサービスや製品のことを指します。

私たちが展開している愛犬用の見守りカメラ「Furbo(ファーボ)」もペットテック製品に当たります。その他、猫用のスマートトイレ、ペットの位置情報検知器、犬の健康状態や感情を分析するデバイスなどが存在します。フードのサブスクリプションサービスや、飼い主とペットシッターのマッチングアプリなどもペットテックの一部と考えられるでしょう。

「Furbo」はスマホを通じた見守りや動画撮影はもちろん、おやつをあげたり、声をかけることなども可能。留守番中の愛犬の様子を認識して自動通知するサービスも

——ペットテックの現在の市場規模はどのくらいでしょうか。

2018年度のペットテック市場規模は7億4,000万円と出ており(前年度比321.7%)、2020年度には22億円、2023年度には50億円程度まで拡大すると予想されています(※1)

2019年度の国内のペットビジネスの総市場規模は、前年度比1.7%増の約1兆5,700億円に上るとされており(※2)、私たちはどちらの数字も参考にしています。
※1 国内ペットテック市場規模調査 2019年11月※2 国内ペットビジネス市場調査 2020年2月 共に矢野経済研究所調べ・小売金額ベースによる

——日本以外でペットテックが進んでいる国はどこでしょうか。

米国が圧倒的ですね。APPA(アメリカペット製品協会)の調査によれば、米国のペット産業の消費額は右肩上がりで、2019年に約753.8億ドル(約8兆2,000億円)に上ると予測されています。
日本での犬の飼育頭数は約1,000万頭、米国では約8,500万世帯が犬を飼っていますから、市場規模も約7〜8倍と見ると妥当な数字でしょう。

米国は日本と比べて一般的に家や庭が広く、住環境が異なるため、多くの家庭が共にペットと暮らしています。また、見守り用カメラなどのIoT関連商品の認知度も高く、積極的に活用されていますし、テクノロジーを使ったペット用のおもちゃの開発なども盛んです。

私たちのグループも米国が発祥であり、米国、欧州を中心に13カ国で展開していますが、売上の多くは米国になります。米国以外の国については、ポテンシャルはありますが、需要の本格化はこれからのところが多いと思います。 例えば、インドは犬の頭数が非常に多いのですが、家庭内で飼育されている数は少なく、ペット用品の需要はまだ伸びていないというのが現状です。

Tomofun株式会社 取締役社長 布施 健(ふせ・たけし)さん
Tomofun株式会社 取締役社長 布施 健(ふせ・たけし)さん

進む「ペットの家族化」が市場のポテンシャル

——注目されているペットテック関連のプロダクトについてお伺いします。「Furbo」のユーザーの特徴などを教えてください。

女性が8割で、30代、40代の方が多く、ボリュームゾーンは25~44歳。ただこれは、女性が進んで購入されるケースが多いということで、内訳は家族と暮らしている方、既婚の方、単身の方と様々です。犬種で多いのは小型犬で、子どものいない方も多いようです。
また、犬を飼うことができて、その周辺のグッズ等にもお金を使えるということですから、可処分所得はやや高めの層ということになります。

ECから5万台程度を販売。ニーズの要は“お留守番需要”。愛犬家であるユーザーの使い勝手や細かな要望に配慮している

——具体的なサービスのポイントはどのような点にあるのでしょうか。

Furboは「愛犬にお留守番をさせるときの悩み」を解決するためのソリューションです。
ユーザーに「愛犬をどう思っていますか」と尋ねたところ「ペット」と答えた人は5%未満で、80%以上が「家族」、次いで「子ども」「赤ちゃん」と回答されました。現代ではペットも大事な家族の一員ですから、その暮らしに役立つことがサービスの最も重要なポイントですし、ペットテック全体のポテンシャルにも通じると考えています。

——ユーザーからのデータなどはどのように活用されているのでしょうか。

利用開始の際に、愛犬の犬種や年齢、飼い主さんの属性などを入力してもらうほか、映像から分析した愛犬の吠え声や活動パターン、おもちゃで遊んでいる様子、Furboに近づいてきた瞬間の表情のデータ、その他、帰宅時などに写り込んだ家族の様子などを、サービスに繋げています。もちろん、必要としないサービスや通知はオフにもできます。

定額制の「スマートドッグ通知」では、AIを活用して愛犬のセルフィを自動でスマホに通知したり、人がカメラに写り込んだ瞬間をリアルタイムで通知するなどの設定が可能

——そのほかに、注目されている国内外のペットテックプロダクトやサービスとしてはどのようなものがありますか。

例えば、猫用のスマートトイレ「toletta®︎(トレッタ)」などは、素晴らしいプロダクトだと思います。体重や健康状態を記録するほか、有料で動画の撮影や獣医師への相談が可能になるという仕組みですね。

猫がトイレに入ると尿量や体重を自動で測定。スマホアプリを通じて健康状態を知らせる

ヘルスケアの分野で言うと、愛犬の首輪に装着して心拍数や活動量などのデータを取得するウェアラブルデバイスの開発も進んできているようです。心音センサーを活用して愛犬の感情を分析する「INUPATHY(イヌパシー)」なども、ペットをよりよく知る上でユニークな取り組みですね。

米国では個体の種別や体重や年齢などに合わせたフードのパーソナライズサービスなども人気があります。飼い主同士や飼い主とペットシッターを繋ぐマッチングサービスにも、投資家などから期待が寄せられているようです。

(左)愛犬の活動量を分析するヘルスケアデバイス「Whistle(ホイッスル)」。(右)愛犬の感情を分析するデバイス「INUPATHY」
(左)米国のペット向けのサブスクミールサービス「NomNomNow(ノムノムナウ)」。(右)ペットシッターのマッチングサービス「DogHuggy(ドッグバギー)」

人間が必要とするサービスはペットにも求められていく

——ペットテック市場の展望をどのようにご覧になっているでしょうか。

国内で今後どのようなアイテムやサービスが抜きん出るかというと、現状は横並びの状態だと思っています。米国で人気のものには引き続き注目していく必要があるでしょう。

また、先述の通り、ペットは多くの飼い主にとって家族の一員になっています。ペットの長寿化や、飼い主のライフスタイルの多様化に伴って、ペットと人の絆はより深まるでしょう。
ですから、言葉を話せない家族のために必要な、安全や健康面に配慮するもの、ケアや介護に役立つもの、コミュニケーションをはかり、理解を深めるためのもの、生活を効率化するものなど、人間にとって必要なサービスは、ペットに対しても優先的に求められていくと思います。

Furboについても、ユーザーの約70万頭のデータに基づき、進化させていきます。例えば、AIによる愛犬の吠え声、行動、表情の分析や危機感知機能のさらなる強化、映像をクラウド上に保存して、ショートムービーを自動作成できる機能などの展開を検討しており、米国ではすでに一部のサービスを実現しています。
スマートスピーカーとの連携などもリリース予定ですし、スマートホーム関連の家電システムや、ホームセキュリティーに関わる企業、不動産、通信業界等からの引き合いも多くいただいていますので、今後そういった別の業種との連携なども可能性に含めていきたいと考えています。

——ペットテックがさらに人々の生活に浸透していくための課題などはあるでしょうか。

IoTにまつわる社会全体のリテラシーが向上すれば、ペットテックもライフスタイルにより自然と取り入れてもらえるようになるでしょう。
私たちもユーザーとのコミュニケーションを大切にしながら、愛犬家に求められるサービスを一つひとつ実装していきたいと思います。


近年存在感を増している「ペットの家族化」は、ペットテック市場を牽引する大きな理由の一つになっていました。飼い主に言葉で伝えられないという点でいえば、ペットは赤ちゃんなどとさほど変わりません。ペットテックにまつわるサービスやPRを展開する上では、ベビーテックと同様に安全性や清潔感を重視した展開や、家族の一員であるペットを想うユーザーの気持ちに寄り添う細やかな気配り・目配りが求められるでしょう。

Written by:
BAE編集部